制度趣旨を考えない助成金・補助金受給は危険?

会社の運転資金が心許なくなると、社長は自然と金策を考え始めます。銀行からの借り入れをすることもあれば、事業の見直しを考えることもあると思いますが、突然「補助金」「助成金」と言い出したら少し気にかける必要があると言えます。

まず、こうした制度を活用すること自体は良いことです。国や地方自治体が提供している適法な制度なので、上手く活用すること自体は良きことです。しかしながら、補助金にも助成金にも「制度趣旨」ってものがあって、ただジャブジャブお金を配るものではないという点にも注意が要ります。

どちらも基本は企業の支援。助成金ならば、雇用を促進するために出るわけです。補助金も同じ。ものづくりやIT導入を支援するために出る。コロナ禍初期に配布された一律の給付金みたいなものとはちょっと違うのです。

ですから、実際は「おいしい話」ってあんまりないのです。設備投資系の補助金でも、最初にお金が出ていって、その2/3とかが補助されるわけで、利益が出るわけでもない。助成金なら、例えばパートやアルバイト、契約社員を正社員にすることなどに助成金が出る。

正社員になれば、当然給与も以前のままというわけにもいかないでしょうし、また近年は、助成金の受給要件に昇給が含まれていることもあり、企業の負担は当然増える。

だからこその助成金なわけです。

だから、こういった制度趣旨を考えず「ただでもらえるものは、もらっておきたい」とか「補助金とか助成金とかで、楽にお金を手に入れたい」って考えているのは本末転倒で、社長としてそれ大丈夫なの? ということになります。

まあ、私も経営者なので、お金がほしいという気持ちはわかりますが……。その精神性にちょっと危険なシグナルかな、ということです。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士 1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。 会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚

「会社を潰してしまう社長は、アートが好き」は本当か?(横須賀 輝尚 経営者) ChatGPT(GPT-4)は、弁護士や税理士など士業・専門家の相談業務を奪うのか?(横須賀 輝尚 経営者) コロナ禍で露呈した「使える士業」と「使えない士業」の決定的な違い(横須賀 輝尚 経営者) コロナ5類移行で外国人労働者の争奪戦が始まる(小島 健太郎 行政書士) ママ社労士が教える、育休明けからスムーズに職場復帰する方法。(桐生 由紀 社会保険労務士) 過去最高の税収68兆円より社会保険料が多い理由。(中嶋 よしふみ FP)

編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年10月16日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?