CPIのヘッドラインの前年同月比が高止まりするなか、実質の平均時給はプラス圏を確保しつつ伸び悩みました。実質平均時給は前年同月比0.5%上昇し8月と変わらず、6カ月連続でプラスとなるも、2021年3月以来の高い伸びだった6月の1.3%以下を保ちます。生産労働者・非管理職に至っては0.8%上昇し、7カ月連続でプラス圏を維持しつつ、前月の0.9%以下に。2021年2月以来の高い伸びとなった6月の2.2%からまた一歩遠ざかりました。

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チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小(作成:My Big Apple NY)

その他、米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は63.0となり、市場予想の67.2を下回った。前月の68.1にも届かず5カ月ぶりの低水準となる。現況指数も66.7と市場予想の70.4以下となり、前月の71.4も下回った。期待指数も60.7でこちらも市場予想の65.5だけでなく前月の66.0を下回り、5カ月ぶりの低水準だった。

1年先のインフレ期待は3.8%と、前月の3.2%を超え5カ月ぶりの高水準だった。5―10年先インフレ期待も3.0%と、2022年9月以来の低水準だった前月の2.8%を上回った。

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チャート:米10月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値、インフレ見通しの上昇を受け5カ月ぶりの低水準(出所:Street Insights)

CPIはエネルギーや帰属家賃など住宅関連以外で鈍化傾向を確認しました。イスラエルとハマスの大規模衝突を受けて原油高によるインフレ加速が意識されますが、アラブの盟主を自負するサウジアラビアが米国とイスラエルとの三者合意を引き続き目指すならば、世界経済の減速を受けて原油高が継続するかは不透明、また、航空運賃の伸び鈍化が示されるように一部のコト消費は鈍化の兆しがみられるだけに、現時点では追加利上げの可能性は低いと言えそうです。

編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年10月14日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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