ところで、フランシスコ教皇は11日、サンピエトロ広場の一般謁見で、「攻撃された者には身を守る権利がある」と明確に述べたのだ。このステートメントは7日の教皇の発言の中にはなかったものだ。
教皇の11日の追加メッセージを聞いたイスラエル大使は13日、カトリック通信社(KNA)とのインタビューで、「イスラエルの自衛権を認めた教皇のメッセージには満足している」と述べ、7日とは打って変わってフランシスコ教皇のメッセージを称えた。そして、「第2次世界大戦中に無実のドイツ人がいたのと同じように、パレスチナ人の中に無実の人々がいるのは事実だ。現代の非対称戦争では、被害を受けるのは民間人であることが多い」と強調し、フランシスコ教皇のメッセージに歩み寄っている。
なお、シュルツ大使はエルサレムのキリスト教会指導者らの声明についてもコメントしている。同大使によると、キリスト教会指導者は侵略者ハマスの名前を明確に挙げて非難していないというのだ。
イエスの福音に倣い、「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出し」(「マタイによる福音書」5章)、相手の罪も許そうとするキリスト教の教えの世界では、子供たちを射殺するハマスのテロリスト、そしてウクライナの民間人を殺すロシアのプーチン大統領に対して、バイデン大統領のようには一刀両断というわけにはいかない。これはキリスト教の教えの神聖さの証である一方、弱みともなる。
フランシスコ教皇が13日、イスラエルに自衛権があると間接的ながら認めたということは、駐ローマのイスラエル大使ではないが、大きな一歩だ。別の表現をすれば、ハマスのテロがそれだけ野蛮で非人間的だったことを物語っていたわけだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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