さほど青くないのに「青魚」と呼ばれる魚がいる一方で、実際に「青い魚」もまた存在しています。
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青魚は本当は「赤い魚」?
体に良い食べ物であることで知られる青魚。アジ、サバ、イワシ、カツオなどの回遊性の強い魚たちを指してこのように呼んでいます。
これらの魚は背が黒みがかった銀色をしており、水中にいると青っぽく見えることから青魚と呼ばれます。しかし実際にその色が真っ青というわけでもなく、特に死んだ個体は輝きを失って黒ずんでしまうため、「青」魚と言われても???となる人も多いのではないでしょうか。
一方で、これらの魚には別の共通点があります。それは「持久筋を多く含む」というもの。
上記の通り回遊魚である彼らは、長時間泳ぎ続ける必要があるため、いわゆる「遅筋」が卓越しています。遅筋は赤い色素であるミオグロビンを多く含み赤っぽく見えるため、青魚は「赤い魚」であるともいえます。
青い魚は実は青くない
さて、上記の青魚とは違い、「実際に青い魚」というのもいます。熱帯で広く食用にされるナンヨウブダイなどのブダイの仲間や、ソラスズメダイのようなスズメダイの仲間の魚がそれに当たります。
青い色合いは浅い海の中では水に溶け込む性質があり、これは一種の保護色であると言えます。しかし実はただ一種を除き、世界中のすべての魚は青の色素を体表(鱗)に持っていないことが判明しています。
青い魚が青く見えるのは、反射層の絶妙な組み合わせがもたらす「構造色」によるものなのだそうです。つまり、彼らは我々の目に青く見えているというだけで実際には青くはないとも言えます。
様々な部位が実際に青い魚
というわけで「体色が青い魚」は実際にはほとんどいないことになるのですが、「体の一部が青い魚」は実はいくつかいます。
有名なのが「ダツ」。彼らはなぜか骨の色が青く、まるでプラスチック製品のような人工的な見た目をしています。ちなみに近縁のオキザヨリの骨はきれいな黄緑色をしています。
また、ブダイの一種「アオブダイ」は、歯が美しいターコイズブルーをしています。この色は死んでも色褪せずに残ります。
更に、筋肉が青緑色の魚もいます。様々な釣りのゲストとしてよく顔を出す「アナハゼ」がそれです。彼らは食性によって青い色を獲得するとも言われており、個体によっては筋肉はおろか骨、卵巣に至るまできれいな翡翠色をしていることも。
個人的にはアジやサバよりこういう魚を「青い魚」と呼びたい気持ちがありますが、皆さんはいかがでしょうか。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>