おしっこを我慢すると嘘がバレにくい

おしっこを我慢すると嘘がバレにくい
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実験の結果、50 mlの水を飲んだ人と比較して、700 mlの水を飲んだ人は、尿意を強く感じており、インタビュー中に嘘をついてもより長尺で、具体的な話をすることができていました。

また第三者の評価において、700 mlの水を飲み、尿意を我慢していた人は、嘘がバレる確率が低くなりました。

具体的には、おしっこを我慢しながら嘘をついて人は、インタビュー中に自信をもって発言しているように見え、説得力が強く感じたと評価されました。

この結果から、嘘をつくときにおしっこを我慢すると、抑制波及効果が生じ、相手に嘘がばれにくいと言えるでしょう。

ではなぜ抑制波及効果が生じたのでしょうか。

研究チームは「尿意を我慢することによる身体的制御と嘘をつくために働かせる認知的制御は一見異なるように思えるが、脳内ではそれほど分離されていない。」

「実際に、感情コントロールや動作の静止など別の領域での抑制機能を働かせたときに活性化する脳領域は重なっていることが報告されている。」と述べています。

しかし今回の実験では、おしっこを我慢するときの抑制波及効果は嘘を述べた時のみ生じ、真実を述べている場合に、説得力が増すような現象は確認されていません

なので、真実を述べているときの説得力を高めるためにおしっこを我慢しても意味がないことは頭に入れておくべき事実でしょう。

尿意を我慢することによる抑制波及効果は嘘以外でも生じる

尿意を我慢することによる抑制波及効果は嘘以外でも生じる
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おしっこを我慢することによる抑制波及効果は、嘘をつく以外の場面でも効果を発揮します。

学術誌「Psychological Sciece」に投稿された蘭トゥウェンテ大学のミルジャム・トゥク氏(Mirjam Tuk)らは、おしっこを我慢すると、無関係の課題遂行時の自制心が向上する現象を報告しています。

具体的には、尿意を我慢すると、目の前の利益よりも将来の利益を優先し、金銭的にリスクのある選択肢や高カロリーな食べ物を避けることができます。

この結果は、おしっこを我慢することで生じる抑制波及効果が、さまざまな領域で利用できる可能性を示唆しています。

しかし我慢が続いている状況で、目の前に自分の衝動を駆り立てる刺激が現れると、自制心の発揮が難しくなる可能性もあるはずです。

この現象は「自我消耗」と言われ、自制心は有限の資源であり、使うと減ってしまう考えに基づいています。

例として、テスト勉強を頑張った後に、いつもなら我慢できるお菓子を買ってたくさん食べてしまうケースなどが挙げられます。

研究チームはこの疑問に対して「おしっこを我慢するための行動的制御は、自動かつ無意識のプロセスで行われるため、自我消耗が生じないのではないか」と述べています。

今後、面接、ダイエット中や給料日直後の買い物など、自制心を発揮する必要がある時には、水をたくさん飲むのがいいのかもしれません。

あまりにも尿意が強い場合には、脳の抑制機能のリソースが尿意の我慢にすべて割かれ、逆効果になる恐れもあるのでご注意を。

参考文献
Needing to Pee Actually Makes You a Better Liar, Study Finds
Full bladder, better decisions? Controlling your bladder decreases impulsive choices
元論文
The inhibitory spillover effect: Controlling the bladder makes better liars