今から半世紀以上も前の1969年7月20日、人類は初めて月面に足を降ろした――。しかしこの「アポロ計画」を最後に有人月面着陸が行われていないのはどういうわけなのか。そこでにわかに浮上してきた人類の月面着陸は捏造されたのものではないかという“陰謀論”を検証するにあたって、同じ年に起きた“奇跡のメッツ”が参考になるという。
1969年の“月面着陸”と“奇跡のメッツ”
54年前の1969年、アポロ11号の宇宙飛行士、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面に着陸し人類にとっての“偉大な一歩”となる快挙を果たした。
しかし不思議なことにアポロ17号が1972年12月12日に6度目にして最後の月面着陸を行って以降、再び人類が月面に降り立つことはないまま今日に至っている。50年前よりも基礎技術は進歩し、コンピュータの性能も各段に向上していることは明らかなのになぜ人類は月面を再訪できないのか。
そこで出番となるのが“陰謀論”だ。人類の“月面着陸”は巧妙に仕組まれた“芝居”であり”でっち上げ”であるとする見解が一部で根強く信じられている。
だが少し冷静になって考えてみたい。ロチェスター工科大学で物理学と天文学を教えるマイケル・リッチモンド教授は“月面着陸”の真偽を考えるにあたって、同じく1969年に起こった“奇跡のメッツ”現象がきわめて役立つというのである。いったいどういことなのか。
1969年のメジャーリーグベースボール(MLB)優勝決定戦の第66回ワールドシリーズは、ニューヨーク・メッツがボルチモア・オリオールズを4勝1敗で下し、球団創設8年目で初の優勝を果たし“奇跡のメッツ(Miracle Mets)”と呼ばれた。
それまでにメッツは一介の弱小チームで、1967年にはメジャーリーグで最も勝利数が少なく、優勝前年の1968年もワースト3であった。このような弱小チームがその翌年に優勝したというのはまさに“奇跡”であったのだ。
“月面着陸”と同じ年に起きたこの“奇跡のメッツ”だが、この2つのイベントが実際に起こった“史実”であることを54年後の世界に生きる我々はどうやって確かめたらよいのか。もしそれが客観的に確かめられないとすれば“陰謀論”である可能性も残されることになる。