住宅など建物を取り壊した場合には、1カ月以内に建物滅失の登記を申請することが不動産登記法第57条で定められている。もし、この滅失登記の義務を怠った場合、不動産登記法第164条により、10万円以下の罰金が課せられることが定められている。しかし、実際には建物が存在していなくとも、登記簿上では建物が存在していることになっている例は少なくない。しかも、数年間もそのことを知らないままになっている例もある。なぜ、建物が登記簿だけに存在してしまうのか。

建物の滅失登記をするタイミングは?

建物を解体する際には、解体専門の会社に依頼することが多いだろう。この時、解体を請け負った会社は、所有者に対して取り壊し証明書を発行することになっている。しっかりとした解体業の会社なら、法務局への申請のサポートもしてくれるため、スムーズに滅失登記まで完了できる。

しかし、解体業者が書類の発行を忘れていたり、その会社が倒産したりなどの事情があり証明書の発行が途中でうやむやになってしまうような場合は、滅失登記がされないまま、登記上では建物が存在したままになる。

建物が登記上で存在すれば固定資産税がかかる

現実には建物が存在していなくとも、登録上で建物が消滅していなければ、当然に固定資産税の納税通知書が所有者に届くことになる。固定資産税は毎年1月1日現在に登記されている土地・建物に課税されることになるため、例えば2017年内に建物を取り壊したとしても、滅失登記の申請を2017年内に法務局に提出していなければ、2018年1月1日の時点では建物が存在していることになり、2018年度分の固定資産税がかかることになる。

土地や建物を複数所有している人は、ひとつひとつの固定資産税の内訳をよく確認していない場合もあるため、建物の取り壊しをした覚えがあるなら調べてみたほうがよいだろう。

解体した建物の固定資産税を納めた後、滅失登記をしていないことが分かり、後から滅失登記の手続きをしたとしても、当該の年度の納税分は還付の対象とはならないので注意したい。

建物が登記されたままなのはいつ気が付く?

存在しない建物が登記されたままになっていたということに気が付くのは、どのようなタイミングになるだろうか。もっとも多いのは土地の売買のタイミングである。銀行などから今はない建物が登記上で存在するとして、抹消してくれるよう求められることがある。

また、既存の建物を建て替えする場合で、新築の建物の完成後に保存登記する際、前の建物が登記されたままになっていることに気が付くケースもある。

滅失登記は個人でも申請可能

建物の滅失登記を土地家屋調査士に依頼した場合の費用は、約4万~5万円程度は必要になる。申請は法務局に提出するため、土地家屋調査士に依頼したほうが安心ではあるが、費用を少しでも節約したいと思うなら、滅失登記を自分が申請しても良いだろう。

土地や新築の建物の表示登記とは違い、測量図がないため個人でも取り組みやすい。必要書類さえ準備できれば、問題なく申請まで完了できるだろう。

複数の不動産を所有していればいるほど、建物の滅失登記はうっかり忘れやすいものになる。不動産登記法で罰則を規定されているものの、1ヵ月以内の期限が過ぎたからと言って、必ず罰金がかかるということではないが、存在していない建物の固定資産税まで納税することは得ではない。2017年に建物を解体した覚えのある人は今一度確認してみてはいかがだろうか。

文・MONEY TIMES 編集部

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