10年ひとむかし、なんて表現があるが、それから考えればホンダS2000が誕生した1999年前は十分「むかし」と言っても良いだろう。
日本のモータリゼーションが一気に花開いた1960年代、国産車の性能は飛躍的に向上し、明らかに進化を遂げた。しかし、1980年代も終わろうかという頃、軽自動車は64馬力、普通車は280馬力という、最高出力の面では自主規制枠というものが出現した。
これは言ってみれば、スペックの面では少なくとも日本の公道を走る上で”必要にして十分”という判断がなされたという見方もでき、以降は自動車の良し悪しの主眼はスペックよりもハンドリングやパワートレインのリニアさだとか、”数値では表せない領域の深化”と、燃費性能や環境性能の”進化”に重きが置かれるようになったといっても良いだろう。
「S2000」は本田技研工業の創立50周年を記念して企画され、1999年に発売となった2人乗りのスポーツカーである。車名の通り2,000cc(正確には1,997cc、のちに2,156ccへと拡大)の専用ユニットは、過給機に頼って規制いっぱいの280馬力は追い求めたりはせず、”9,000rpmまで回せる”などレスポンスの良さに重きを置いた自然吸気方式を採用。オープンカーでありながらクローズドボディ車を凌駕する剛性を誇る「ハイXボーンフレーム構造」の車体も話題を呼んだ。
S2000のホンダらしいところは、「スカイラインGT-R (BNR34)」や「シルビア (S15)」「スープラ (A80)」などが生産終了の憂き目を見た『平成12年(2000年) 排ガス規制』も乗り越えたことで、その後も文字通り唯一無二の日本製スポーツカーとして2009年まで生産された。
もはや、自動車の進化は脱・内燃機関に主体が置かれるようになって久しい今でも、改めて24年前に発売されたS2000のステアリングを握ると、”古臭くなった”とか”遅い”といったネガティブな印象は皆無で、軽さやレスポンスの良いエンジン、決してイージーではないが操る楽しさを堪能できるハンドリングなど、魅力にあふれている――ということにクルマ好きはとっくに気づいており、その証拠に中古のS2000はとんでもないプライスタグを掲げている。
そんな動向に機敏に反応したのが、日本のモデルカーメーカーの『メイクアップ』。すでに初期型の2リッター車(AP1型)に始まり、外観の意匠変更や2.2リッターへと排気量拡大を受けたAP2型を1/43や1/18でリリースしているが、今回は最終進化形とも言えるタイプSの1/18をリリースすることとなった。
実車を3Dスキャンし、そのデータを元に設計された原型は正確無比。さらに実車のパーツ分割や仕様マテリアルをリサーチして、最適な表現を目指したディテール造形や塗装、仕上げなど、その美しさはため息ものだ。手間のかかる製造工程を経るため値段も張るが、製造数に限りがあるため、欲しいカラーなどがある方は、早めに予約を入れておいたほうが賢明だ。商品のデリバリーは2024年1月以降を予定している。

文・鵜飼誠/提供元・CARSMEET WEB
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