
名門アルファが、面白くなってきた!
アルファロメオにようやく復活の兆しが見えてきた。キッカケはジャストサイズのSUV、トナーレだ。FRベースのDセグメントモデル、ジュリアおよびステルヴィオはその高い性能と優れたデザイン性にもかかわらず、大ヒット作にはならなかった。日本においては当初ナビシステムが純正で装備されず、加えてあまりにクイックなステアリングフィールがとくにSUVのステルヴィオでは敬遠された。大きめなボディサイズや価格の問題もあって、ミトやジュリエッタといった小型アルファからの乗り換え層を吸収できなかったことも響いた。


その点、トナーレは現実的だ。ボディサイズは4530×1835×1615mmと手ごろ。しかもアルファロメオらしいデザインセンスはそのままに新たなHVパワートレーンを得て発売された。48VマイルドHVシステム搭載グレードに加えて今回、本命というべきプラグインハイブリッドグレードが追加されたことでブランドへの注目度も再び増す。本格的な電動ブランドへの第一歩だ。
トナーレの主力、PHEVのシステム出力は280ps!
トナーレPHEV・Q4の基本メカニズムはプラットフォームを共有するジープ・レネゲード4×eと同様である。フロントに最新の1.3リッター直4ターボ「マルチエア2」エンジンと主に回生を担う小型モーターを積み、リアアクスルに駆動を担当する94kWの電気モーターを置く。前後の異なる動力源の間には、当然ながら物理的なつながりはない。電子制御によって駆動力配分はつねに最適化されている。バッテリー容量は15.5kWhと十二分。最大で72kmのEV走行レンジを確保した(WLTCモード)。システム総合出力は280psと、このクラスのSUVとしてまずは十分な数字だ。


口がコンセント形状になったお茶目なヘビマーク(エレクトリック・ビショーネ)にブランドの未来を感じつつ乗り込んだ。基本的に見栄えも操作方法もマイルドHVモデルと変わらない。ただしドライブモードの「アルファDNA」は当然、専用の制御に調整された。Dはエンジン+モーターの最大性能を楽しめ、スロットル応答性もシャープ、変速もスピーディだ。Nは効率的なモードで、電動走行から始まり、状況に応じてエンジンを掛ける。そしてAはフル電動。e-Saveボタンを使えばバッテリー節約モードもしくはバッテリー充電モードのいずれかへ繋ぐことも可能だ。
正直にいってマイルドHVのトナーレは心踊る存在ではなかった。「スモールワイド4×4」プラットフォームの高いポテンシャルこそ感じたものの、そこにアルファロメオらしさが演出されているとは思えなかった。その点、PHEVは違う。とくにDモードにおける加速がいかにもアルファロメオらしくてよかった。モーターパワーがエンジンの駆動に波のように覆いかぶさって前のめりの走りをみせるのだ。この元気の良さがあってはじめて、ステアフィールの鋭さなどモダンアルファの味付けが生きてくる。
EV走行の質感の高さにも感心した。静かにフル電動で走るアルファも悪くない。名門の未来が少しだけ明るくなった気がした。