質問NG記者リスト作成、PR会社の業務としては一般的
そんな今回の会見で渦中の存在となったFTIコンサルティング。アメリカに本社を置きグルーバルに拠点を展開するコンサルファームであり、同社のHPには次のように書かれている。
<グローバルビジネスアドバイザリーファームとして、M&Aや事業再編あるいは訴訟等をはじめとする経営上の重要課題に対するサポートの提供を行い、グローバルビジネスにおける企業価値向上を支援します。 業務デューデリジェンス、ビジネスインテリジェンスをはじめ、不正行為調査、コンピュータフォレンジック、Eディスカバリー、知的財産権保護コンサルティングあるいはクライシスコンサルティングをはじめとする、幅広いビジネスリスクに対するソリューションを提供します>
危機管理・広報コンサルタントで、長年、企業・自治体の管理職向けに模擬緊急記者会見トレーニングや研修・セミナーの講師なども手掛けてきた平能哲也氏はいう。
「2回の会見自体への評価としては、謝罪会見にしては珍しいほど合格点に近い。1回目での社名変更しない点は私も批判的だったが、東山氏、井ノ原氏、ジュリー氏(今回は欠席)は記者の厳しい質問に対して真摯かつ率直に答えており、様子が乱れたり声を荒げたりするような場面もなく、特段に問題は見られなかった。企業等の酷い謝罪会見をこれまでどれほど見てきたことか。
NG記者リストに関するジャニーズ事務所の否定コメントを読む限り、事務所が指示したとは考えにくい。一方、FTI側が、クライアントである事務所に忖度して、サービスだという意識でこのような行為を行った可能性は十分に考えられる。批判的な質問が出ないままスムーズに会見を終えることで事務所から評価されて、今後の継続的な取引につなげたいと考えてもおかしくはない。
もっとも、記者の顔写真までのせたリストを、証拠が残ってしまう書面で作成し、さらに報道陣から見えるかたちで会場に持ち込むというのは、コンサルティング会社やPR会社の情報セキュリティ感覚としては信じられない。もしその事実が公になればどのような事態を招くのかということへのイマジネーションが欠落している。危機管理(広報)意識の欠如そのものだ。
もし私がアドバイスを求められていたら、こんなリストは作らず逆に厳しい質問が予想される記者を先に指名して発言してもらう。前回の会見のように長い主張や質問が続けば『この後、多くの記者の方が質問を待っているので簡潔に願います』と司会が言えばよい」
広告代理店関係者はいう。
「会場や司会者をはじめとするスタッフの手配、当日の会見の運営・進行など、企業が記者会見でPR会社を使うことは一般的。クライアント企業が事前に質疑応答の際に指名NGの社や記者を指定することも珍しいことではなく、PR会社として、事前に質問NG記者リストを作成してクライアントに『どうしますか?』と意向を確認することは、倫理的・道義的な側面は置くとして、ビジネスとしては当然の行為。ただ疑問なのは、もし仮にジャニーズ事務所から事前の打ち合わせで『絶対当てないとダメ』と釘を刺されていたのだとすれば、クライアントの意向に背くかたちで一部記者を当てないようにするというのは、通常では考えられない。事務所側が嘘を言っているのか、もしくは、このPR会社内で情報連携ミスなどがあったということになる。また、スタッフが報道陣から丸見えの状態で顔写真入りのNG記者リストを手に持って会見場に入ってくるというのは、ちょっと信じがたいほどの失態。間抜けすぎて、PR会社としての能力を疑わざるを得ない
また、一部の記者に質問をさせないまま質問を打ち切ったことで、会見の最後のほうでは記者からクレームが出て場が騒然となり、混乱ぶりがテレビやネット動画を通じて広く伝わってしまった。結果としてこのPR会社自ら混乱を招いて会見の評価を下げた点も、PR会社としては失格といえる」
(文=Business Journal編集部、協力=平能哲也/危機管理・広報コンサルタント)
提供元・Business Journal
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