逆に、産業界が政治的決定を見越して自主自律的に石炭火力の廃止を進めるのならば、金融は積極的に支援すべきである。金融とは産業界の意思を資金供給によって実現することである以上、産業界が石炭火力廃止という変革の意思をもつのなら、それを支援するのは当然のことなのである。しかし、変革は常に事業上の危険を大きくすることであり、危険が大きくなるなかで資金調達を支援することは、金融界として容易なことではない。

発電事業者として、現に稼働している発電所の運転を耐用年数に達するよりも早く放棄すれば、大きな減損を強いられて自己資本が減少するわけで、銀行の立場からすれば、既存の融資の質が劣化するにもかかわらず、発電能力を維持するための新発電所の建設資金を融資しなければならなくなる。この困難な問題を金融の技術によって解くことにこそ、石炭の利用に関する環境問題において、金融が果たすべき社会的責任があるわけだ。

森本 紀行 HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 HC公式ウェブサイト:fromHC twitter:nmorimoto_HC facebook:森本 紀行

 

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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