ミジンコは、誰もが「学生の頃に教科書で見た」身近な存在です。
非常に小さくありふれているため、圧倒的に弱いことや無価値なことを「ミジンコのようだ」と表現することさえありますね。
そんなミジンコたちが、私たち人間を含む地球のピンチを救ってくれるかもしれません。
イギリス・バーミンガム大学(University of Birmingham)生物科学部に所属するルイーザ・オルシーニ氏ら研究チームは、ミジンコを利用して汚水をろ過するシステムを考案しました。
テストでは、重金属や工業用化学物質をミジンコたちが捉えて汚水を浄化できることを実証しています。
研究の詳細は、2023年9月25日付の科学誌『Science of the Total Environment』に掲載されました。
ミジンコを使った汚水処理のアイデア
「水処理プラント」は、汚水を人体や環境に安全な水質レベルにまで処理する設備です。
しかしそれらの施設では、必ずしも産業排水中に含まれるすべての汚染物質を除去できるわけではないようです。

特に自然に分解されにくい「残留性有機汚染物質(POPs)」が河川に放出されるなら、最終的に私たちの食料や飲料水にまで混入してしまう恐れがあるのです。
しかも水をろ過するための現在のシステムの多くは、高いコストがかかり、たくさんのCO2を排出する場合があります。
そのため、環境に優しく、低コスト、しかも拡張性のある新しいタイプの汚水処理システムが求められています。
今回研究チームは、新しいシステムとして地球上で小さな生物の代名詞でもある「ミジンコ」に着目しました。

ミジンコは水中で生息する甲殻類であり、水中から微小なプランクトン類、残骸、粒子をこしとって食べる「ろ過摂食者(filter feeder)」です。
オルシーニ氏は、この特性から「ミジンコが汚水をろ過して汚染物質を取り除いてくれるかもしれない」と考えたのです。
水処理プラントのタンクに大量のミジンコを入れ、汚染物質を取り込ませるなら、環境に優しく低コストなろ過システムとして機能するというわけです。
もちろん、それら汚染物質が分解されて無くなるわけではありませんが、ミジンコが集めてくれることで、自然界に放出される化学物質の量が減ります。
結果として、私たちが摂取する水や食物への混入を防ぐはずです。