ところで、日本では岸田文雄首相が「世界平和統一家庭連合」(旧統一教会)の解散請求を出す意向という。今回の解散請求は安倍晋三元首相暗殺者、山上徹也容疑者の供述に基づいている。母親が高額献金し、その結果、家庭は破産に追い込まれたということで、献金先の旧統一教会憎しがテロリスト山上容疑者の旧統一教会批判の核だ。
だから、旧統一教会を批判する側は教会側の高額献金問題を先ず挙げる。このコラム欄でも書いたが、献金がその信者の贖罪意識に基づいたものであった場合、問題は少ないが、そうではない場合、献金後問題が生じるケースはあり得る。問題は献金する側の贖罪意識の有無にかかっている。換言すれば、宗教的動機に基づいた献金行為には、「高額献金」、「少額献金」といった金額の差は問題にならない。ただ、贖罪意識の乏しい信者に、強制的に、偽りの贖罪意識を植え付けて献金を集めようとすれば、問題が後日生じる(「人はなぜ『献金』するか」2023年9月17日参考)。
犯罪にも重犯罪と軽犯罪がある。「性犯罪」は重犯罪だ。ところで、重犯罪を繰り返してきたカトリック教会に過去、解散請求が飛び出したことがあったか。国もメディア関係者も教会問題には余り介入してこなかった。ただ、被害者の数が余りにも多いことから、「政教分離」を建前とするフランスでは内務省がカトリック教会に対し、教会の「告白の守秘義務」の廃止を求めた例はある。
参考までに、「性犯罪」は人間の「下部」に関わる問題だ。加害者が聖職者だろうが、芸能人だろうが、「性犯罪」は人々の好奇心の対象こそなれ、真剣にその対応を考えるテーマとは受け取られない。なぜならば、加害者だけではなく、ほぼ全ての人々が「下部」で同じ問題や弱みを抱えているからだ。その結果、ジャニー喜多川氏や聖職者の「性犯罪」に対して隠蔽や“変な寛容”が生まれてくる一方、金が動く「献金問題」では必要以上に執拗に追及しようとするのだ(「聖職者の性犯罪と『告白の守秘義務』」2021年10月18日参考)。
岸田首相が政治的判断から旧統一教会の解散請求を出した場合、他の宗教団体も同じ運命に陥る危険性が排除できなくなる。平信者の献金で賄っている宗教団体は、元信者からの献金払い戻し要求を程度の差こそあれ抱えているからだ。
民主主義国の日本で今、宗教弾圧が白昼、堂々と行われている。それを笑いながら駆り立てているのが、宗教に全く関心がない共産党系弁護士、メディア関係者だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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