インフレ目標達成に必要なGDPギャップは+4%
以上より、もし内閣府のGDPギャップが過小評価されているなら、GDPギャップの水準がプラスになったとしても、真の意味で国内の需要不足が解消されたということにはならないだろう。これは、先述の通り2007年度や2017年度に内閣府のGDPギャップが+2%近くまで到達しても、供給力の天井を上回るほど経済が過熱していなかったことからもわかる。つまり、2007年度や2017年度に日本経済が完全雇用だったと考えるよりも、政府のGDPギャップが過小推計と考えるのが、より現実に近いように思われる。
この考えが正しければ、経済政策におけるインプリケーションは次の通りとなろう。すなわち、政府の潜在GDPとGDPギャップは過小推計されているため、真の意味での潜在GDPという経済の天井は予想よりも高い水準にあり、そこに到達するまでには依然として需要不足の状況にある。そして、真の潜在GDP到達の過程においては、ディマンドプルインフレ圧力は力不足となり、依然として非自発的失業者が存在することからすれば、失業率もまだ低下余地があることになろう。つまり、インフレ率が+2%に安定することなく、さらに高い水準まで実質GDPの拡大が可能となる。そして少なくとも過去の関係に基づけば、+2%インフレ率安定を実現するためには+4%程度のGDPギャップ上昇が必要だと考えられる。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

提供元・Business Journal
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