映画スパイダーマンには、ドクター・オクトパスという複数のロボットアームを自在に操るキャラクターが登場しましたが、こうした技術はフィクションの世界だけのものでは無くなりつつあります。

実際、ここ十数年でロボットアームの開発は急速に進んでおり、人間は機械で拡張された複数の腕を操って作業する時代が近づいています。

ただ開発に成功したとして、そのロボットアームはすぐさま自由自在に扱えるものなのでしょうか?

「もしかして何年もの訓練や努力が必要になるのでは?」と懸念もされます。

そんな中、英ロンドン大学クイーン・メアリー(QMUL)の最新研究により、私たちはわずか1時間の訓練でロボットアームを効果的に使用できる可能性が示されました。

第3・第4の腕を操るのは、そう難しいことではないのかもしれません。

研究の詳細はオープンアクセスの学術誌『IEEE Open Journal of Engineering in Medicine and Biology』に掲載されています。

誰でもドクターオクトパスになれる?

ロボットアームの操作は簡単なのか?
Credit: QMUL – One-hour training is all you need to control a third robotic arm(2023)

ロボットアームによる人間の能力の拡張というアイデアは、長い間、フィクション作品の中だけの話に留まっていました。

アメコミの『スパイダーマン』に登場する宿敵・ドクターオクトパスなどはその最たる例です。

映画『スパイダーマン2』(2004)では、AIを搭載した4本のロボットアームを自身の脊髄に接続し、制御チップを介して自在に操作する姿が描かれていました。

ドクターオクトパス(映画『スパイダーマン2』より)
Credit: CINEMATIC STYLE – Spider-Man 2 / How Otto Octavius became Dr. Octopus(youtube, 2021)

こうした技術は現実の社会にとっても非常に魅力的であり、外科手術や災害現場での人命救助など、実現すれば大いに役立つと考えられます。

また一般人の私たちでも、大きな荷物を両手に持ったまま玄関のドアを開けるなど、日常生活で2本以上の手が欲しいシーンはいくらでもあるでしょう。

その実現のために多くの研究者が開発に取り組んでいますが、課題は高性能のロボットアームを完成させられるかどうかだけではありません。

研究主任でQMULの電子工学者であるエカテリーナ・イワノワ(Ekaterina Ivanova)氏が問題視するのは、ロボットアームをユーザーが自由自在に操作できるかどうかです。

ロボットアームの開発に成功したとしても、それを自分の腕と同じように扱えるまでに長い年月を要したり、熟練した技術が必要になると、社会への利益は小さくなります。

そこでイワノワ氏は、私たちがロボットアームを操作できる能力を検証することにしました。