ゲンシシャでもトップレベルで残酷な写真集
藤井:同じくロサンゼルスの犯罪現場の写真をまとめた『LAPD ’53』という写真集もありますが、こちらは洋書で本文は英語です。ロサンゼルスには「ポリスミュージアム」という博物館があって、そこに展示されている警察関係の写真がたくさん載っています。首を吊った人や、殺人現場の写真がたくさんありますね。

――資料として公式ルートで、こういう現場写真が見られるのですね。日本ではさすがに難しそうな気がしますけど……。
藤井:それはアメリカも同じで、こういった写真集は昔のモノクロ写真の時代のものが多いですね。また、『Murder in the City: New York, 1910-1920』は、タイトル通り1910〜20年のニューヨークの殺人現場の写真集で、判型が大きいところがおすすめポイントです。当時の警察は、犯罪現場を真上から俯瞰で撮っていたことがこの本で知ることができます。

――犯罪現場の写真集といっても、西海岸と東海岸それぞれあるのですね。
藤井:次に紹介するのは『Seine de crimes』というフランスの写真集です。本書は写真の印刷がキレイというだけではなく、内容のハードさもかなりレベルが高いですね。表紙が頭部を撃ち抜かれた人の写真ですから。
――ひぇ……。
藤井:フランスなので、ギロチンで切断された頭部の写真も載っています。ちなみに、ギロチンはフランス革命勃発後のイメージが強いですが、実は1977年まで使われていたそうです。
――現在、EUでは死刑制度が廃止されていますが、ギロチンが現役で使われていた期間というのはかなり長かったのですね。
藤井:そして『DEADLY INTENT CRIME & PUNISHMENT』は、当店でもトップレベルに残酷な写真集です。キャプションもしっかりしていて、資料性も高くオススメですよ。

――ん? この表紙の写真はどこかで見たことがあるような……?
藤井:「死後写真」の回で紹介した「バーンズ・アーカイブ」という、写真コレクションのうちの1枚です。
――一家惨殺事件でベッドにまるで家族が眠っているように撮られた現場写真ですね。
藤井:はい。ほかにも、本書には自動車爆弾が爆発した現場写真や、パノプティコンの写真もありますよ。
――パノプティコンとは真ん中の塔に看守室があって四六時中、囚人を見張れる全展望監視システムの刑務所のことですね。
藤井:ほかには、露出狂が逮捕された際に「このような格好で股間を露出していました」という様子を再現した写真や、自殺するためにトイレの中で自分の頭をライフル銃で吹き飛ばした女性の写真も載っています。
――うわ、完全に首がなくなっていますね。
藤井:あと、タイトルに「パニッシュメント」とあるように、処刑関係の写真も豊富です。たとえば、日本の磔刑や獄門、中国の凌遅刑、頭に袋を被らされ、銃殺されたナチスの軍人の写真などが載っています。読むのになかなか体力を使いますね。
タイの週刊誌は死体OK! でも、乳首はNG?
藤井:2000年にアメリカで出版された『Muerte! Death in Mexican Popular Culture』というカラー写真集を紹介しましょう。メキシコの雑誌「Alarma!」には死体写真がよく載っていたのですが、この写真集はそうした雑誌に掲載されていた死体写真を集めたものです。比較的、最近の書籍なので1992年の写真なども載っています。

――我々からすると写真集にしてしまうことも含めて、すごい感覚だなと思ってしまいますね。
藤井:似たようなものに、「アチャヤーガム」という犯罪現場の写真がたくさん載っているタイの雑誌があります。日本でもその筋では有名ですよね。真偽は不明ですが、日本ではかなり高価な価格で取引されていた話もあるそうです。ほかにもタイには「191」という雑誌もあって、こちらにも死体がたくさん載っています。不思議な話ですが、こういった雑誌は死体の写真はバンバン載せているのに、女性の乳首はちゃんと隠しているんですよ。
――倫理観とか規制というのは本当にさまざまというか……。ところで、海外の雑誌の紹介はこの連載で初めてだったと思うのですが、ゲンシシャは雑誌の取り扱いもあるのでしょうか?
藤井:えぇ。海外雑誌から、割腹自殺した三島由紀夫の写真が掲載された「FRIDAY」(講談社)の創刊号、コンビニに置いてあるような雑誌まで揃えています。
――なんだか意外ですね。
藤井:これがなかなか資料性が高くて、例えば以前「怖い噂」(ミリオン出版)という雑誌を買ったところ、「津山三十人殺し」の報告書にある写真が転載されていることに驚きました。というのも、この『津山事件報告書』はアメリカのスタンフォード大学東アジア図書館にて閲覧が可能です。つまり、ライターの石川清氏がわざわざアメリカまで行って、資料請求したということですね。

――1年経ってもまだまだネタが尽きないですね。今回、紹介しきれなかった本も多いので、次回も少し犯罪現場テーマを続けたいと思います。
【ゲンシシャ連載】
第1回:店主が明かす超絶コレクションの秘密
第2回:死後写真集&隠された母
第3回:フォトショ以前のコラージュ写真と戦前の犯罪現場写真集
第4回:アートの題材となった死体写真
第5回:今では考えられない昔の医療
第6回:妊娠するラブドールに死体絵画
第7回:「見世物・フリークス」の入門書からポストカードまで
第8回:性器図鑑、変態性欲ノ心理、100年前のスパンキング写真集
第9回:超激レア本から学ぶ“切腹女子”たちの歴史とは?
第10回:食人を扱った奇書の数々
第11回:産道から出てくる赤ちゃんを接写… 超タブー「出産写真集」
第12回:UFO、UMA、心霊写真を網羅したオカルト事典の数々!
書肆ゲンシシャ 大分県別府市にある、古書店・出版社・カルチャーセンター。「驚異の陳列室」を標榜しており、店内には珍しい写真集や画集などが数多くコレクションされている。1000円払えばジュースか紅茶を1杯飲みながら、1時間滞在してそれらを閲覧できる。
所在地:大分県別府市青山町7-58 青山ビル1F/電話:0977-85-7515
文=伊藤綾
提供元・TOCANA
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