スロバキア総選挙が国際的に注目されたのは、同国のウクライナ政策が選挙結果次第では激変するのではないか、という懸念があったからだ。フィツォ氏は選挙戦では「武器の支援は戦争を長期化し、平和をもたらさない。対ロシア制裁ではスロバキアにとってマイナスをもたらさない場合に限り、守る」と主張してきた。なお、フィツォ氏の「スメル」主導が新政権を確立するためには少なくとも他の2党との連立が不可欠だ。
EU内の旧東欧加盟国でウクライナ支援で揺れが見られ出した。ロシア軍のウクライナ侵攻以来、ウクライナに人道支援、軍事支援してきたポーランドはウクライナ産穀物の輸入問題が発火点となり、ウクライナと対立してきた。
ハンガリーのオルバン首相は先月25日、ブタペストの国会演説でロシアと戦争中のウクライナを酷評し、「キーウ政府はウクライナ最西端ザカルパッチャ州に住むハンガリー系少数民族約15万人の母国語の権利を制限している。その権利が回復されるまで、わが国はウクライナを国際政治の舞台では支援しない」と述べたばかりだ。そしてウクライナ支援の中止を表明してきたスロバキアの野党「スメル」が選挙で勝利した。
それだけではない。ウクライナへの最大の支援国・米国連邦政府の議会上下両院は30日、11月半ばまでのつなぎ予算案を賛成多数で可決したが、その予算案にはウクライナ支援は除外されたという。ウクライナ政府にとって悪夢だ。
一方、ロシアのプーチン大統領はウクライナ支援で欧米諸国が揺れ出してきたのを見て、「チャンス到来」と受け取り、戦争の長期化を通じて欧米の結束を更に崩す作戦に出てくることが予想される。
ロシアが始めたウクライナ戦争は世界の戦争に拡散する危険性を内包していることを再確認し、欧米諸国の指導者はウクライナ戦争の危険さを改めて国民に伝え、ウクライナ支援で結束を緩めてはならない。世界は正念場を迎えている。これがスロバキア議会選からの「警告」だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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