フランシスコ教皇の「ベトナム信者への手紙」は9月29日、バチカンから公表された。ローマ教皇が「ベトナム信者への手紙」を送るのは、バチカンとベトナム両国が9月28日、両国に常駐する代表派遣で合意したことを受けたものだ。その結果、バチカンはハノイに常駐する教皇代理を派遣することができるようになった。フランシスコ教皇は2023年7月27日、ベトナムのヴォ・ヴァン・トゥオン国家主席とバチカンで会合し、両国間の常駐代表の派遣で合意した。
フランシスコ教皇は手紙の中で、過去数年間の両国間の「良好な関係」を称賛し、7月末にバチカンでベトナムのヴォ・ヴァン・トゥオン国家主席と会談したことに言及、双方向の作業グループでの定期的な対話により「相互の信頼が育まれた」とし、将来的にも成果を生むだろうと述べている。例えば、司教任命権では共産主義政府は司教候補者を推薦する権利を主張していないが、バチカンが望む候補者はまず政府の承認を得なければならないことになっている。これは、2018年に施行された宗教団体に関する法律が定めている。
フランシスコ教皇はベトナムのカトリック教徒に向けて、「国家の中心で福音を実践し、国が均衡のとれた社会的経済的発展をめざす取り組みを支えるべきだ。『良きキリスト教徒であり、良き国民』であるべきだ。そして公正で連帯的で均衡のとれた社会の構築に忠実でありたい」と述べている。
そのうえで、教皇は「コロナパンデミックの間、ベトナムの教会はすべての被災者のために活動し、社会の中で酵母としての役割を果たした。将来も、宗教的、民族的、政治的な所属を問わず、ベトナムのすべての人々に対してアプローチし続けるべきだ」と強調している。
ベネディクト16世の「中国人への手紙」、フランシスコ教皇の「ベトナム信者への手紙」は、いずれも共産主義国に住む信者向けの書簡だ。宗教を否定し、「信教の自由」を蹂躙してきた共産主義社会で神に出会った国民への教皇からの熱いエールだ。前者は学者教皇らしく単刀直入なアピール、後者は外交的な表現で関係の発展を願う心遣いが伝わってくる。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年10月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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