崩れた「ランチの1000円の壁」

 お客にとってお得とされるランチだが、飲食店にとっては負担が大きかったり、利幅が少なかったりするものなのか。

「飲食店の収益構造としては、材料費率の目安は30~35%くらいです。材料費率が低いと、お客さんからは割高に感じられてしまうこともあるので、材料費率が低ければいいというわけでもありません。よく『ランチは儲からない』といわれますが、それは材料費でなく人件費が原因です。ある店のランチの客単価が1000円、夜の客単価が5000円だとして、ランチ時のスタッフの時給と人数は5分の1にはなりません。裏を返せば、昼と夜の客単価が同じお店だと、安定的な需要があるランチは儲かる可能性が高まります。松屋のようなチェーン店は昼も夜も客単価はさほど変わらないため、ランチタイムは稼ぎ時です。なので店側はお客の回転率を上げるために作業効率とオペレーションの向上を絶えず意識しています」(同)

 では現在のコスト上昇の波に、飲食店はどのように対応しているのだろうか。

「現在、飲食業界は『絶賛値上げ中』といえる状況です。値上げをしたらお客さんが離れてしまうから上げられないという飲食店もありますが、自分たちの料理やサービスに自信を持っているなら上げたほうがいいでしょう。ただし、単純な値上げではお客さんは離れてしまうので、値上げをきっかけに材料やサービスの品質を改めてチェックすることも必要です。限られた予算のなかでありきたりな料理や妥協した料理を提供するより、多少価格が上がってもおいしいものが食べたい、普段は家で食べないようなものが食べたいというお客さんをターゲットにしたほうがいいのではないでしょうか。

 値上げの影響で『ランチの1000円の壁』は最近、壊れつつあり、1200~1500円のランチが増えています。お店としていきなり値上げするのが怖い場合、1000円のランチは据え置きにして、1200円、1500円のランチを提供するという手もあります。あらゆるコスト上昇が続く限り、値上げは続くでしょう。そのようななか、税金や社会保険料の負担増加で多くの人の財布の紐が堅くなる一方、お金を出してでもおいしいものを食べたいという人も少なくなく、二極化の流れが続くと考えられます」(同)

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

提供元・Business Journal

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