4.生成AIは芸術の創造性をやせ細らせる危険がある

生命、健康、資産などにかかわる重要な決定は任せられないとすると、生成AIが有効に活用できそうなのは、ゲームや芸術など広い意味での娯楽分野に限られてくると考えられます。

生成AIの発展によって描画アプリ、映像製作アプリ、音楽作成アプリの性能が画期的に向上しました。その結果あまり絵を描く技術は高くない人が「こんな絵を描けたらおもしろいのになあ」といった着想を実現できるチャンスは無限と言えるほど広がっています。

経営学者でもあり、生成AI実用化のために広く啓蒙活動をしているイーサン・モリックは「もし古今東西の偉人がスニーカーを履くとしたら、どんなスニーカーが似合うだろうか」という一連の絵をMidjourneyという描画アプリに描かせています。

結果は次の2枚でご覧のとおり、かなり成功しているものもあり、ちょっと違うんじゃないかなと思うものもあり、さまざまです。

とにかく、これだけ完成度の高い絵に仕上がっているのは、みごとです。エリザベス一世の場合は、当人も背景も古典的な肖像画らしく描かれた前に、ぽつんと現代的なスニーカーが置かれているところが成功していると思います。

それに比べるとエイダ・ラヴレースは、当人とスニーカーは完全に現代的で、背景の世界最初に構想されたコンピューターのほうはビクトリア朝的な怪奇趣味満開で、うまく調和していない感があります。

いずれにせよ、生成AIによる芸術は「だれの作風に似せて」という注文には器用に応じますが、「独創的な作品を」という注文には対応できないでしょう。

オリジナリティのある芸術家が出現しても、そのオリジナリティはあっという間に生成AIによる作風コピーで消費し尽くされて、派生的な亜流芸術だけが氾濫する世の中になってしまう恐れもあります。

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生成AIは電気羊の夢を見るか?

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Donny DBM/iStock

編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2023年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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