ただし、今後、本当に首相の言うように国民へのコストを明らかにするプロセスが始まるならば、このような政策も妥当性が悉く吟味されるようになるだろう。
ネットゼロは、ボリス・ジョンソンなどの歴代の保守党政権も推進してきた政策であるため、スナク首相が提唱した方針転換には保守党内部からも反発がある。
ただし英国では、従前のようにネットゼロへの反論が異端視される状態では無くなっている。多くの議員が、ネットゼロのコストについて、公然と問題視する意見を言うようになった。保守党は本件については分裂状態になっている。
この演説を受けて、政権の支持率は上がっている、という世論調査結果が出てきた。Deltapollが22日から25日にかけて行った調査では、10日前の前回調査と比較して労働党の支持率が3ポイント下がり、保守党の支持率は4ポイント上昇した。労働党はまだ16ポイントも保守党をリードしているが、これは短期間にしては大きな変動である。英国民もネットゼロのコストにうんざりし始めていたとうことだろうか。
他方で、グリーン投資家は悲鳴を上げている。ブルームバーグが伝えているところによると、ロンドンを拠点とし、500億ドル近い資産を管理する低炭素ファンド投資家、Impax Asset Management Group Plcの創設者兼最高経営責任者(CEO)であるイアン・シムは、「完全なショックだ・・・政府方針に依存して英国への投資を考えている人にとってはリスクで、グリーン投資は減少することになる」と述べている。
日本政府は脱炭素で「グリーン成長する」という、経済学の初歩を無視した議論を展開して、コストがかからないフリをして、国民を欺いてきた。スナクのように、日本もコストについて精査し、国民に正直に語るべきだ。
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提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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