山と溪谷社は、9月20日(水)に、『素晴らしき別世界 地球と生命の5億年』を刊行した。
同書は、トーマス・ハリデイ氏が、人類がまだいなかった頃の地球をリアルに描いたもので、昨年にイギリスで発刊され、世界13カ国で翻訳された話題のサイエンス書だ。
地球と絶滅した生命の歴史をリアルに描いた傑作
「アラスカを渡る巨大なマンモスの群れ、泥地にダイヤモンド模様の高木が屹立し、翼竜が水中に獲物を見つけて湖にダイブ!海には透明で巨大なガラス建築が広がり、海底では最古の熱水噴出孔動物ヤマンカシアが生きている。」
生物学・地学・環境科学の最新かつ膨大な知見から、地球上の生命の歴史をつぶさに解き明かす。トーマス・ハリデイ氏が著わす『素晴らしき別世界 地球と生命の5億年』は、最も新しい氷河期から生命の夜明けまで16の時代を旅し、7つの大陸すべてを舞台に、絶滅してしまった生命と地球の姿をリアルに描き切った傑作だ。
2万年前から5億5000万年までの絶滅生物が蘇る
それでは、同書が紡ぎ出す、壮大なストーリーの一部をここで紹介しよう。
はしがき「億千万年の館」から始まり、第1章「融解」では、生存の条件・狩場の支配者などについて語る。第2章「起源」で取り扱うのは、植物が起こした革命・最古のヒトなど。そして第3章は、鳥たちの楽園・おかしなサイズの生き物たちなど、興味深い内容が続く。
また、第4章「故郷」ではティンギリリカの奇妙な動物・海をわたる筏(いかだ)など、第5章「循環」では、体格が良すぎるペンギン・最古のクジラなどについて解説。
第6章「復活」で紹介されるのは、有胎盤類の夜明け・生き残った者、生き残れなかった者など。第7章「信号」は最初の「花」・擬態する昆虫たち・海を漂う楽園など。
そして、第8章「土台」では、翼竜が吐き出した塊、第9章「偶然」では、もっとも奇妙な獣たち・サメの棲む湖、第10章「季節」では、乾燥の終わり・大絶滅の足音などへと、そのストーリーは紡がれていく。
さらに、第11章「燃料」では、三億年前の二酸化炭素などについて解説。第12章「協力」では、岩石を食べる生物など、第13章「深海」では、深海に出現したオアシスなどについて語る。
第14章「変容」では、寒冷化の脅威・炎と氷の饗宴など。第15章「消費」では、古生代のアイドル・食う者と食われる者など。第16章「出現」は、かき混ぜられる海の中で・先駆者たちよ!といったテーマが続き「希望という名の町」と題したエピローグで完結する。
同書の著者であるトーマス・ハリデイ氏は、地学・古生物学・進化生物学・環境科学を専門とし、ケンブリッジ大学で自然科学の学位、ブリストル大学で古生物学の修士、ユニバーシティカレッジ・ロンドンで博士号を取得した。
現在はバーミンガム大学地球科学科とロンドン自然史博物館で特別研究員を務める。
夜の時間が長くなる「読書の秋」にこそ、本書の扉をひらいて5億5000万年前の地球や、そこに確かな足跡を残した絶滅生物たちの息づかいに触れてみたい。
素晴らしき別世界 地球と生命の5億年
著者:トーマス・ハリデイ
訳者:水谷淳
定価:2,860円(税込)
判型:512ページ/46判/1色刷
(高野晃彰)