日本や韓国で愛されるとある「カニ」が、いま欧州の地で外来種として問題になっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
イタリアで外来種のカニが厄介者に
水の都ヴェネツィアを擁し、風光明媚な情景と美味しい海の幸が人気の観光地・イタリアのヴェネト州。今ここで、とある「カニ」が大変な問題となっているといいます。
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そのカニとは「タイワンガザミ」。大きくて強固なハサミを持つ彼らは、他の甲殻類や貝類、魚などあらゆる生物を捕食します。
このタイワンガザミは、もともとの分布域であったインド洋から国際運河であるスエズ運河を通って地中海に入り込み、外来種となっています。ヴェネト州では特に養殖貝類に与える経済的被害が大きくなっているようで、州知事が警戒を呼びかけているそうです。
タイワンガザミってどんなカニ?
そんな厄介なタイワンガザミ、いったいどんなカニなのでしょうか。
タイワンガザミはワタリガニ科に属する中型のカニで、自然分布域は西南太平洋~インド洋となっています。
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実はわが国では人気の食用ガニのひとつで、名前を見ると外来種のように思えますが、日本においては在来種です。オスは鮮やかな青い色合いをしており、各地でアオガニと呼ばれています。
ワタリガニとして各地で親しまれているガザミの仲間で、一番下の脚が遊泳脚と呼ばれるひれ状になっており、水中を泳ぐことができます。そのためほかのカニと比べても高い移動能力を誇ります。
韓国で引き受ける可能性
そんなイタリアのタイワンガザミに関して、今月中旬、韓国の新聞が興味深い報道をしました。
それは「韓国のワタリガニ輸入業者が、タイワンガザミをイタリアから輸入する計画を進めている」というもの。ソウルの近隣にある仁川市のカニ輸入業者が、タイワンガザミを韓国に輸出できる現地業者を探してほしいと駐韓イタリア商工会議所に要請したのだそうです。
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実は韓国は日本以上にタイワンガザミを愛する国で、茹でたり蒸したりして食べるほか、生のカニでつくるキムチ「ヤンニョムケジャン」や、醤油漬け「カンジャンケジャン」などの材料としても欠かせないものです。
一方でもともとガザミ類があまり生息していないイタリアでは、捕獲したタイワンガザミも積極的には利用されていないといいます。そのため韓国では「もし安く手に入れられるなら、どんどん送ってほしい!」と期待する声が高まっているといいます。
外来種であることや漁獲後の取り扱い、両国間の距離などハードルはいくつもあると思いますが、実現するかどうかとても興味深いです。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>