ご存じの通りアメリカは確かに物価が高いのでそのアメリカの労働者はインフレに見合う労賃の引き上げ要求は当然起きます。が、アメ車を含めアメリカ国内で製造される商品の労働コストが上昇すれば当然ながら見合いの販売額引き上げとなります。問題は他国ではアメリカほどの物価水準ではないのです。私が高いと悲鳴を上げるカナダの物価でもアメリカに比べれば何割も安いのです。
経済学的には自動車産業のように多くのライバル会社が世界に散らばっており、販売も世界展開するのであれば経営者は価格競争力を維持するための最大限の努力をします。ですが、仮に大統領が労働組合の味方をし、破格の労働条件を経営側に飲まさせることになればそれはアメリカの自動車産業の崩壊を意味することなのです。
多くの自動車会社では既に一定時期に内燃機関の自動車製造を止める、ないし相当縮小し、EV化することを打ち出しています。今回の労組の要求は企業側にEV化を更に推し進めさせることになり、下手をするとアメリカで予想よりも早くEV化が進んでしまう気がします。果たしてそれがバイデン大統領の真の戦略なのかそれは私には分かりませんが、たぶん、そんな深い考えよりも目先の票ではないかと思います。
そういう意味では今回は自動車労連が政争の具と化したとも言える気も致します。
明日は政治とEVについて考えてみたいと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月26日の記事より転載させていただきました。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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