イラン最高指導者ハメネイ師は過去、「大量破壊兵器の核兵器はイランの教えとは一致しない」と強調し、イランが核兵器を保有する考えがないことを繰り返し主張してきた。
イランは2015年7月、国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた6カ国と核合意を締結し、イランの核開発計画があくまでも核エネルギーの平和利用と主張してきた。イランの核合意の代わりに、制裁を解除することになっていた。しかし、トランプ米前政権は2018年5月、イランが核合意の背後で核開発を続行しているとして核合意から離脱。それ以来、イランは順次に核合意で締結した合意内容を破棄してきた。
そして、21年1月1日、同国中部のフォルドウのウラン濃縮関連活動で濃縮度を20%に上げると通達。2月6日、中部イスファハンの核施設で金属ウランの製造を開始している。4月に入り、同国中部ナタンツの濃縮関連施設でウラン濃縮度が60%を超えていたことがIAEA報告書で明らかになっている。なお、イラン議会は20年12月2日、核開発を加速することを政府に義務づけた新法を可決した。そして今回、ウラン濃縮83.7%の製造だ。イランの核開発計画は核拡散防止条約(NPT)など国際条約の違反であり、国連安全保障理事会決議2231と包括的共同行動計画(JCPOA)への明らかな違反だ。
一方、イランの核武装化を恐れるイスラエルは、「テヘランが核兵器を保有することは絶対に容認されない」と指摘、必要ならばイランの核関連施設を空爆すると警告してきた。イスラエルは2007年9月、シリア北東部の核関連施設(ダイール・アルゾル施設)を爆破したことがある。
スンニ派の盟主サウジアラビアもイラン(シーア派)の核兵器開発をただ静観していることはないはずだ。サウジの実質的統治者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は20日、米FOXニュースとのインタビューの中で、「イランの核武装は悪い一歩。もしテヘランが核爆弾を手に入れたら、サウジも同じことをしなければならなくなり、地域全体での核軍拡競争をもたらすだろう」と警告を発している。
ところで、同総会では中国や韓国の代表が基調演説の中で、福島第一原発の処理水の海洋放出開始について言及するものと予想される。IAEAは独自の調査結果をまとめ、「福島第一原発の処理水放出では国際規約に一致し、問題はない」と公表済みだ。日本からは高市早苗経済安全保障担当相が出席し、処理水の放出に加盟国の理解を求める。
なお、グロッシ事務局長の再任が今回の総会で承認される。任期は今年12月から4年間だ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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