国連は本来、安保理決議により、侵略国に対し、侵略行為を排除するために国連軍を組織して戦うことを本質とする組織ですが、日本はこの国連軍に参加し、武力を行使することを正式には可能としていません。「旧敵国」であり、国連の武力行使にも参加しない国が、「唯一の被爆国」「国連加盟国中最多の安保理非常任理事国選出国」であるからと言って常任理事国入りを目指すことには、かなりの無理があるように思います。
国連憲章第51条に定められた集団的自衛権は、拒否権を持つ常任理事国から侵略を受けた国は実質何の救済も受けられないことに憤慨したラテンアメリカの諸国の提案により、安保理決議が出るまでの間、互いに助け合うことを権利として認めたものです。日本人の多くが誤解しているような、「大国とともに世界のどこにでも行って武力を行使する権利」ではありません。
集団的自衛権行使の要件は「急迫不正の武力攻撃の発生」「被侵略国からの救援要請」「国連安保理への報告」「国連安保理が必要な措置を執るまでの間」「必要性と均衡性」の五つであり、同盟関係の存在は必ずしも必要とはされていません。ですから、理論的にはウクライナ救援のために集団的自衛権を行使する可能性はNATOにもあったわけです。にもかかわらず、かなり早い段階でアメリカはこれを否定しました。それがロシアの誤算を招いたとの説もあります。
ウクライナ侵略の停戦の方法については、国連総会における「平和のための結集決議」(ESS)を活用すべき、との論考もあり、この点議論を深めたいと考えています。
今年の夏はとうとうつくつく法師の鳴き声を一度も聞かないままに過ぎ去ろうとしています。「暮れてなお命の限り蝉しぐれ」は故・中曽根康弘大勲位の名句ですが、10日余りの短い成虫期間のうちに種族保存の目的を果たさねばならない蝉のオスは、命の限り求愛活動として鳴き続けるのだそうです。蝉たちの今後は一体どうなるのか、鳴かなかったのが私の周りだけだったのならよいのですが、とても心配になります。
来週は9月も最終週となりますが、一年の四分の三が過ぎようとしていることに、たまらなく焦燥感を覚えます。
皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年9月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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