芸術史に燦然と輝く『モナ・リザ』や『最後の晩餐』の作者である絵画の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452〜1519)は、あらゆる学問に精通した科学者としても有名です。

そんな芸術家であり科学者でもあったダ・ヴィンチは、樹木を描く上で”ある法則”を見出していました。

それは「一本の樹木において、すべての枝を合計した太さは枝分かれする前の幹の太さに等しい」というものです。

これは現在の植物学でも広く受け入れられる法則となっています。

そんな中、英バンガー大学(Bangor University)とスウェーデン農業科学大学(SLU)は、ダヴィンチが目を向けなかった木の内側で新たな発見をしました。

それによると、水や養分を通す「維管束システム」にはダヴィンチの法則が当てはまらなかったのです。

研究の詳細は、2023年9月18日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

ダヴィンチが発見した「木の法則」とは?

レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画
Credit: ja.wikipedia

ダヴィンチは生前、より正確な樹木のデッサンを目指して、あらゆる木々のサイズ比を調べていました。

その結果、すべての樹木に見られるある傾向に気づきます。

それが先ほど述べた法則で、ダヴィンチは自身のノートに「すべての枝の断面積の合計は、枝分かれする前の幹の断面積に等しい」と書き残しました。

さけるチーズを想像していただくと、より分かりやすいかもしれません。

チーズを真ん中あたりまでいくら細かく裂いても、それを握り合わせて合計すると元の1本の太さに戻ります。

ダヴィンチはこれが樹木に当てはまることを今から500年以上も前に発見したのです。

単純ではありますが、実に驚くべき法則でしょう。

ダヴィンチのノートに書き残された樹木についての法則
Credit: COVE – Da Vinci’s “Rule of Trees”(2020)

この洞察は風景画を写実的に描く上で非常に役立ったと言われています。

さらに驚くべきは、この法則が現代の植物学においても広く受け入れられていることです。

実際、3Dスキャン技術を用いたある研究では、枝の総断面積が幹の面積にかなり近くなることが示されています。

加えて、近年の研究では、樹木がダヴィンチの指摘した法則通りに枝分かれすると、風への抵抗力が増し、強風によるストレスを軽減できることが示されているのです。

このように大昔にダ・ヴィンチが発見した木の法則は、現代の植物学者たちから見ても非常に興味深いものなのです。

そのため、このダ・ヴィンチの法則に基づく新しい研究も未だに報告されています。

それが今回の研究チームが発表した、樹木の内側を走る「維管束システム」にはダヴィンチの法則が当てはまらないという新しい発見です。