数字でみる村上の成長
村上と正GKの座を争う永石の防御率も約1.2と優れていることから、福岡の守備自体が固いことが分かる。ただ、昨2022シーズンと今2023シーズンの数字を比較し深掘りすると村上の成長が見えてくる。最も優れているのはペナルティエリア外からのシュートセーブ率。2022シーズンは80%だったが、今季はなんと驚異の100%。つまり、1点も許していないのだ。無論、これはリーグトップの成績である。
その他、ペナルティエリア内からのシュートに対してのセーブ率は58.1%から61.5%へと上昇。ペナルティエリア内からのシュートへのキャッチ率は19.4%から25.6%、ペナルティエリア外からのシュートのキャッチ率は52%から57.1%と、いずれも昨季より上がっている。
また、相手と1対1になった局面での対応も成長している。直近のJ1第28節(9月23日)柏レイソル戦(3-1)では、前半12分に柏のMF山田雄士のシュートを右手一本でセーブし、後半アディショナルタイム8分にはFW細谷真大との1対1を素早い飛び出しで制した。この試合ではコーナーキックから1失点したものの、屈強かつ身体を張るDF陣を突破されても村上が安定したセービングで死守し続け、流れの中からの失点は最後まで許さなかった。
見逃せないピッチ外での貢献
前述のようにGK永石と出場時間を分け合っている村上は、ベンチに座っている時間も決して短くない。永石が積極的に起用されるカップ戦ではとりわけ長くなるため、出場時間を求める村上にとって悔しさがないわけではないだろう。
それでも村上は、ピッチ外からもチームに貢献できることを示し続けてきた。ベンチに座る他の誰よりも大きな声を仲間へ送り、得点時や勝利後には全力で祝福する。夏場の飲水タイムには全員が1か所に集まって言葉を掛け合ったり、試合の行方がどちらに転ぶか分からない局面ではベンチメンバーがピッチの選手たちを鼓舞するなど、チーム一丸となった姿は福岡の強さを表す一面でもあるが、その中心にはいつも村上がいる。
リーグ戦では現在8位の福岡だが、上位までの勝ち点は僅差で迫っており、天皇杯とルヴァン杯でもベスト4といずれも優勝の可能性を残している。村上が築いてきた数字と同等の記録を残す名GK達のキャリアを見ても、福岡にとって悲願のタイトル獲得がより現実味を帯びてきたと言えるのではないだろうか。