テレワークの延長として注目されている「ワーケーション」。「Work」と「Vacation」をかけ合わせた造語で、リゾート地や温泉地など普段の職場や自宅とは異なる場所での多様な働き方を意味します。
株式会社パーソル総合研究所(以下、パーソル総研)が公開した 「ワーケーションに関する定量調査」の結果からは、理想と実態に隔たりがあることがわかりました。
この調査は、全国の20~69歳の就業者(性別問わず)109,034人を対象に行っています。
ワーケーションの導入状況
観光庁の『「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書』によると、企業のワーケーション導入率は5.3%と低い水準。導入を検討している企業も12.7%と、それほど多くないようです。
政府や地方自治体は、観光や地方創生の切り札として捉えてワーケーションを推進しているものの、企業の実態はまだ追いついていないのが現状です。
ワーケーション経験者の約4人中3人が自覚なし
観光庁の定義にもとづくと、「ワーケーション」には、普段の職場や自宅とは異なる日常生活圏外の場所での多様な働き方が内包されています。
パーソル総研の調査によると、「日常生活圏外の場所で仕事と自分の時間を過ごした」という経験がある人は17.4%となりました。
そのうち、「ワーケーションをした経験がある」と自覚している人は25.9%となり、およそ4人中3人が「自分はワーケーションをしている」と自覚していないようです。
経験者のうち14.1%が隠れワーケーション
無自覚を含むワーケーション経験者のうち、14.1%が企業や他の従業員に隠れてワーケーション(隠れワーケーション)を行っているようです。
特に、リラックスしながら仕事に集中したい「息抜き集中」タイプ、旅行中に仕事をやるつもりがなかったが仕方なく仕事をしている「仕事浸食」タイプ、帰省中や用事の前後などのついでで仕事をしている「動機低め」タイプは、約5人に1人が隠れワーケーションを行っている傾向でした。
自覚の有無に関わらず、ワーケーション経験者のうち、半数がワーケーションを認めていない企業で従事していることが判明。
企業がワーケーションを容認している場合には、隠れワーケーションは発生しにくいということも示されています。
「企業と従業員の双方にとって意味のあるワーケーション制度の導入が必要」
パーソル総研の研究員である中俣良太氏は調査結果を受け、「ワーケーションは、従業員にとっては柔軟な働き方として魅力的な選択肢にもなり、企業側にとってのメリットも多いが、セキュリティリスクや労務管理上のリスクなどをコントロールしなければならない課題も生じる」と指摘。
そのうえで、「ワーケーションする目的の内容に応じて容認可否を判断するなど、企業と従業員の双方にとって意味のあるワーケーション制度の導入が必要であろう」と提言しています。
【参考】
新たな旅のスタイル ワーケーション&ブレジャー
「新たな旅のスタイル」に関する実態調査報告書