運動していると精神的な落ち込みが少ない

分析の結果、運動をしていない人(月に約3.5日)と比較して、運動をしている人(月に約2日)は精神的健康状態が悪い日が月に約43.2%少ないことが確認されました。

またこの傾向は過去にうつ病の診断履歴がある人ほど、運動によるメンタルの改善効果が強いことが分かっています。

具体的には、運動をしていない人(月に約11日)と比較して、運動をしている人(月に約7日)は月に精神的に落ち込む日数が約3.8日少なくなりました。

運動をしていない人(月に約3.5日)と比較して、運動をしている人(月に約2日)は精神的健康状態が悪い日が月に約43.2%少ない
Credit: Chekroud et al. (2018)

さらに運動の種類に関して「チームスポーツ」が精神的健康を改善することが分かりました。

基本的にはどの種類の運動でも効果はあるのですが、ウォーキングやランニングのような1人でする運動よりも、野球やサッカーなどの複数人で行う有酸素運動の方が強い効果を持っています。

またチームスポーツについで、サイクリングとエアロビクスそしてジム通いが精神的健康度の向上に寄与することも分かっています。

運動の種類によって精神的な落ち込みの減少率が変化する
Credit: Chekroud et al. (2018)

しかし1人でできるヨガや家事であっても、精神的負担を約10%以上減少させる効果を持っているので、負荷が少ない運動でもメンタルを改善できるようです。

チームスポーツの方が1人の運動よりもメンタルを改善できる理由は、当然のことながら運動をする中に人間関係が伴うだめだと考えられています。

研究チームは「今回の結果は運動に伴う社会活動が引きこもりや孤立を減らし、チームスポーツが他のスポーツよりも精神的健康の維持に優れている可能性を示している」と述べています。

さらに今回の研究では、運動の種類のみでなく、精神的健康にとって最適な運動量についても調査が行われています。

そしてその結果、興味深いことに運動のやり過ぎが逆効果になる可能性が示されたのです。

過剰な運動量は精神状態を悪化させる

この研究によると、運動と精神状態には「U字型」の関係性があるようです。

つまり、ある地点まで運動頻度を増やすことでメンタルを改善できますが、ある地点を超えるとメンタル状態を悪化させてしまうということです。

その折り返し地点である、メンタル面を改善する運動の最適なペースは「1日30-60分、週3-5回」でした。

メンタル面を改善する運動の最適なペースは「週3-5回、1日30-60分」
Credit: Chekroud et al. (2018)

この折り返し地点を越えた「1日90分以上、1ヵ月23回以上」の運動は、精神状態にとって最適な運動量の場合と比較し、過去1か月に落ち込む日数が約1.5倍増え、メンタルヘルスが悪化してしまう可能性が確認されました。

研究チームは「これまで人々は、運動をすれば精神的健康が良くなると信じてきた。しかし、私たちの研究はそうではないことを示唆している。1回の90分以上の運動を月に23回以上を行うような過剰な運動は、精神的健康状態が良くなるのではなく、悪化する。」と述べています。

運動をする際は、身体的・精神的にも健康になれるよう、時間と頻度に注意し、運動をするよう意識してみてください。

参考文献
One Hour of Exercise a Week Can Prevent Depression
Exercise linked to improved mental health, but more may not always be better
元論文
Association between physical exercise and mental health in 1·2 million individuals in the USA between 2011 and 2015: a cross-sectional study
Exercise and the Prevention of Depression: Results of the HUNT Cohort Study
Facilitated physical activity as a treatment for depressed adults: randomised controlled trial