独ローマ・カトリック教会ミュンヘン・フライジング大司教区のラインハルト・マルクス大司教(枢機卿)はミュンヘナー・メルクーア紙(9月19日付)とのインタビューで、「同性カップルに神の祝福を与えるか」と質問され、「常に具体的な状況に依存するが、彼らが神の祝福を求めるならば、それに応じるだろう」と答えている。実際、多くのカトリック教会では既に同性カップルのための祝福の儀式が行われているが、教理上からみて問題がないわけではない。

マルクス枢機卿(バチカンニュース2021年6月10日から)

バチカンは2021年、「神の計画に従って明らかにされたものとしては客観的に認識されない」として、同性パートナーシップの祝福は「許可されていない」と明確にした。それでも、マルクス枢機卿のように、同性カップルに神の祝福を与えようとする聖職者が絶えないのだ。「教理」と現場での「実践」の間に次第に格差が広がってきている。

最近、デュッセルドルフ近郊のメットマンの教区神父が同性カップルの祝福式を実施したが、保守派聖職者で知られるケルン大司教区のライナー・マリア・ウェルキ枢機卿から叱責を受ける、といった出来事が起きたばかりだ。神の祝福を与えるべきだと主張する聖職者たちは、「私たちは、教会的に結婚の秘跡を受けられないカップルがいることを知っている。しかし、彼らがそのために牧会から排除されることはあってはならない」と指摘している。

ところで、マルクス枢機卿は2019年12月12日付の週刊誌シュテルンのインタビューの中で、「カトリック教会は同性愛者の人々を歓迎する。同性同士が長年互いに誠実にカップルの生活を送っているなら、教会は彼れらの生き方に一概に負や無の評価をくだしてはならない」と述べる一方、「カトリック教会は同性カップルにも“司牧的に寄り添う” (seelsorgliche Begleitung)ということであって、『結婚の秘跡』を授けるわけではない」と断っている。同枢機卿は4年前の時点で同性カップルに「司牧的に寄り添う」と表現する一方、「結婚の秘跡を授けるわけではない」と両者の違いをはっきりと強調していた。

同枢機卿の発言は当時、教会内外で大きな波紋を投じ、「私は多方面から批判を受けている。ある人々は『彼はやりすぎだ』と言い、ほかの人々は『彼は不十分だ』と言う」と述べている。忘れてならない点は、マルクス枢機卿はフランシスコ教皇を支える枢機卿顧問評議会メンバーの1人であり、教皇の信頼が厚い高位聖職者だ。同枢機卿の発言はフランシスコ教皇の意向が反映していると受け取って間違いないだろう。