悪魔の爪痕の知見を活かす
これでサイドハウジングの課題、ローター本体による燃焼の解析ができた。残るはローターハウジングだ。これは「悪魔の爪痕」という表現で知っている人も多いだろう。かつてNHKテレビの「プロジェクトX」の番組の中で出てきた言葉で、開発エンジニアを悩ませた課題だ。
アペックスシールとローターハウジングで起こる摺動でローターハウジングに傷ができてしまうトラブルだ。言ってみればサイドハウジングの課題と同じ種類の課題になるが、ローターハウジングは鋳鉄製を採用しているため、対策方法は別の手法が取られた。

これはマツダの技術研究と生産技術、開発部の英知を集め、ローターハウジングの表面処理生産効率改善のために、「高速メッキ化」にトライした。その結果、課題は解決し、また副産物として低摩擦なメッキ表面を手に入れることで、少ないオイル量で油膜形成ができ、さらに摩擦抵抗の低減も実現することができたという。
こうして、発電専用に新規開発した「8C」型ロータリーガソリンエンジンは完成し、電動駆動ユニットと組み合わされてMX-30に搭載したのだ。

ちなみに電動駆動ユニットに触れておくと、モーターは125kW/260Nmで、ジェネレーターは油冷構造を採用しコンパクトサイズとしながら高出力を達成している。バッテリーは17.8kWhのリチウムイオンバッテリーをフロアに搭載している。バッテリーは冷媒冷却方式とし、薄型構造でバッテリーの厚みを抑え、ボディと強固に結合することで車体剛性を向上させていると説明している。つまり、バッテリー本体が車体剛性を作る構造体のひとつという考えた方を取り入れているわけだ。
EV走行距離は107km。それにロータリーエンジン用ガソリンタンクを50L搭載。充電はACでの普通充電とDCの急速充電に対応し、またV2L、V2Hにも対応している。EV走行距離を使い果たす前に急速充電器でチャージすれば、ガソリン消費を抑えることが可能になり、使い方次第で燃費は稼げるPHEVになっているというわけだ。
提供・AUTO PROVE
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