MGMが手掛ける世界最高水準のIR

大阪IRの開業に伴っては、大きな経済波及効果が見込まれている。第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの永濱利廣氏はいう。

「大阪府市は整備計画で国内外の年間来訪者数を約2000万人と想定しており、近畿圏への経済波及効果は年間約1.1兆円、雇用創出効果を約9.3万人と見込んでいる。

大阪IR、海外カジノの数倍の6400台の電子賭博機を設置…「世界一危険」報道
(画像=『Business Journal』より引用)

IRの経済効果としては、建設業界以外にも、IRに紙幣の計算機などを納入する通貨処理機関連業界などにも恩恵が及ぶことになろう。また、大阪でIR開業となれば、鉄道延伸の効果も期待されよう。事実、大阪府は2016年時点で鉄道整備などの関連事業費のうち、大阪市営地下鉄中央線の延伸などに640億円を計上している。

そして、海外IRの事例などを参考にすれば、2025年の関西・大阪万博開催前後に1.1兆円程度の経済効果があるだけでなく、IR運営で持続的な経済効果が出ることに加え、万博跡地などのテーマパークや大型商業施設などができれば、大阪府・市の試算のように年間1.1兆円規模の経済効果が続くと考えられる。特に、関西の経済規模が80兆円程度であることからすれば、年間1兆円規模の経済効果が持続することは大きいといえよう」

その一方で「負の効果」として懸念されているのが、カジノ目当ての外国人観光客増加に伴う大阪市内の治安悪化や依存症患者の増加だ。その依存症をめぐって、前述のとおり海外のカジノ施設を大きく上回る数の電子賭博機が設置されることに、専門家から懸念の声が相次いでいるというのだ。

「大阪IRの延べ床面積は約77万平方メートルで、この数字を聞いてもピンとこないかもしれないが、たとえばシンガポールの大規模IRであるマリーナベイサンズよりも大きい。運営するMGMリゾーツ・インターナショナルは米国ラスベガスに本社を置き、大規模なカジノを多数展開しているが、そのMGMが手掛ける世界最高水準のIRということで、世間の人々が考える以上に大規模なカジノとなる。

その規模に比して導入されるスロットマシンなど遊技マシンの数も増えるということだろうが、街全体が世界的なリゾート地でもあるラスベガスやマカオとは性格を異にする大阪に、カジノ目的でどれだけ海外から富裕層が足を運ぶのかは未知数。同じアジアであればマカオやシンガポールのカジノに行くという富裕層も多いだろう。年間の来場者2000万人、売上5200億円というのはかなり甘い見積もりだという指摘も多く、巨額の資金を投入して巨大な施設をつくったものの閑古鳥が鳴くという悲惨な状態にもなりかねない。そうなれば、おのずと治安悪化や依存症の問題もそれほど大きくはならないかもしれない」

(文=Business Journal編集部、協力=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

提供元・Business Journal

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