アオサギ撃退法
実は筆者は詐欺を退散させるフレーズを知っている。「知り合いに建築会社がいる」と言って断るのも一つの手だが、「うちはどこよりも工事費用が安く、仕事ぶりに定評のある業者を紹介できます」と揺さぶりをかけられる場合もある。有無を言わさぬためには、「うちは賃貸で大家さんが別にいる」あるいは「保険会社や代理店と相談する」というものだ。もちろん、詐欺の手口を知った上でのことだが。なかには「大家さんを紹介してください」と食い下がるアオサギもいるが、「大家さんの連絡先は個人情報なので、大家さんの了解を取ってからでないと教えられません。あなたの連絡先を教えてください」と切り返すと、相手は引き下がるしかない。
被害者が加害者に
自然災害などの保険金詐欺に遭ったとしても、アオサギが連絡先を変えたりして、被害額を取り返すのは、現実的には難しいとされている。こうした金銭的・精神的ショックもさることながら、何よりも怖いのは、本来の被害者であるはずの人が加害者となるケースだ。
先ほど、経年劣化による損害に保険金は支払われないと書いた。アオサギたちはその盲点を突く。実例を紹介する。火災保険に加入していたBさん宅に、アオサギがお決まりのフレーズでやってきた。アオサギは、「経年劣化で壊れた箇所もまとめて請求しましょう。高額の保険金が支払われますよ」と持ちかけてくる。もっと悪質なのは、屋根などを故意に壊すケースもあることだ。
不安に思ったBさんが、「ここは以前から壊れているけど、大丈夫なの?」と確認したものの、「こちらにお任せください」との返答だったこと、何より高額の保険金と聞いて、Bさんの心がときめいて経年劣化を知りながら保険金を請求した。だが、これこそが被害者が加害者になる第一歩だ。虚偽の理由で請求すれば犯罪となる可能性がある。調査の結果、経年劣化が明確になり、さらに契約者も「不正と知りながら犯罪に加担していた」と見なされれば、刑罰の対象となる恐れもあるので注意が必要だ。
今や情報がSNSで入手できるといっても、高齢者がSNSを使いこなして情報を取捨選択するのは容易ではない。年々、手口は巧妙になり、どこから入手したのか保険会社の請求書を持参するケースもあるという。日本損害保険協会では、こうした不正な請求に関する情報を損害保険会社などの間で情報交換することにより、公平・公正な損害額の算定や適正な保険金等の支払いを行うための制度をつくって、厳格に対処している。
雪国などでは、これからがアオサギの活躍のシーズンだといわれている。高齢の親が詐欺に巻き込まれると、子どもたちにも影響は及ぶ。一度聞いても忘れる高齢者もいるので、折に触れ、親にはアオサギのことを繰り返し話してほしいと願う。取り返しのつかないことのないように「まずは相談」が重要だが、保険会社や代理店に聞きにくい人もいることだろう。そんな人のために、日本損害保険協会が、昨年9月に保険金に関する災害便乗商法 相談ダイヤル「0120-309-444」(さぁ連絡しよう)を開設しているので、利用してほしい。
(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)
提供元・Business Journal
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