イングランド女子1部ウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)では、9月14日に今夏の移籍窓口が終了。期間中には2名の日本女子代表(なでしこジャパン)選手が初の海外移籍として同リーグ加入を決めた。
9月6日にMF宮澤ひなたがマイナビ仙台レディース(WEリーグ)からマンチェスター・ユナイテッド・ウィメンへと完全移籍。9月12日にはFW植木理子が日テレ・東京ヴェルディベレーザ(WEリーグ)からウェストハム・ユナイテッド・ウィメンへと完全移籍。WSLに年々増えていく日本人選手たちの姿は誇らしくもあり、女子サッカー繁栄の期待感を高めるものである。
ところで今夏、植木の加入によってWSLで最も多くの日本人選手が所属するクラブとなったのがウェストハムだ(9月18日時点、DF清水梨紗、MF林穂乃香、FW植木の3名が在籍)。ここでは、同クラブについて、また10月1日からスタートするWSL2023/24シーズンに向けての注目ポイントについて紹介したい。
東ロンドン生まれのクラブとシャボン玉の謎
プレミアリーグに所属する男子チーム、ウェストハム・ユナイテッドは、ロンドン東部をホームタウンとする1895年に創設されたクラブで、その歴史は長い。一方、他クラブ同様に女子チームは比較的新しく、ウェストハム・ユナイテッド・ウィメン(以下ウェストハム女子)は、1991年に創設となった。
男女共に「ハマーズ」または「アイアンズ」の愛称で親しまれ、その由来となっているのがクラブエンブレムにも描かれているハンマーだ。ウェストハムは元々1890年代に東ロンドン地域の製鉄・造船会社のメンバーで結成されたサッカーチームだった。当時、製鉄業界で頻繁に使用されていたリベットハンマーが起源と言われている。
また、興味深いのがクラブアンセム(応援歌)の歴史だ。1919年頃にアメリカでヒットした『I’m Forever Blowing Bubbles(僕はいつでもシャボン玉を飛ばしているー”いつも空想にふけっている”の意)』が元となっており、この曲がなぜウェストハムの応援歌になったのかは謎に包まれている。
7月10日にクラブの公式YouTubeで公開された、2023/24シーズンクラブユニフォームのプロモーション映像や概要欄では、応援歌の起源について次のように説明されている。
「なぜ私たちがこの歌を歌うのか、真実は誰も知らない。アメリカのニューヨークから来たとか、ビリー・”バブルス”・マーレイ(1920年代のハマーズのプレーヤー)から始まったという説。ブーリン・グラウンド(※)で演奏したベクトン・ガス・ワークス・バンドが持ち込んだという説もある。戦時中の地下鉄駅で歌われ、ウォーカップで優勝した時にも聴こえていたとか」※ブーリン・グラウンドは1904年のオープンから2016年まで、ウェストハムのホームスタジアムだった施設。
「何が真実であろうと、これは私たちのクラブへの賛歌、歴史だ。東ロンドンで歌われ、世界中で認められている私たちの歌。希望と誇りをもって、私たちは永遠に歌い続ける」
どうやら応援歌の歴史を掘り下げるだけでもかなり長い物語がありそうだが、そんなハマーズとしてプレーする女子チームの近況と注目ポイントを見ていこう。