ではプーチン氏は武器の問題以外に何を考えているのか、ですが、私はズバリ、極東の防衛力ではないかとみています。ロシアは歴史的に国土の大きさとモスクワの位置関係からロシア西部の防衛比重が大きく、シベリアについては政策的に中国と良好な関係を維持し、国境問題の懸念を払しょくするというのが外交方針だと理解しています。

ところが中国がこのところ外政内政共に苦戦しており、贔屓目に見ても積極外交をできる状況にはありません。中国のNO2の李強首相はG20でもその存在感を発揮することはなく、外交分析筋からすれば「手腕は知れている」と見た公算はあります。とすれば政策的に維持しているロシアと中国の関係も「弱い者同士」になるために北朝鮮に敢えてスポットライトを当てた、というのが私の解釈です。

ロシアの歴史を振り返っても第二次世界大戦での最大の危機はドイツのモスクワへの進撃でした。歴史にレバタラは禁物ですが、あの時日本が満州から南ではなくシベリアを攻めていれば世界地図が変わったかもしれないのです。東西広大な土地に於いて兵力を右や左にそう簡単に振り回せない、それはロシアの最大の弱点として周知の事実ですが、当時の日本の軍部と外交筋は読み間違え、欧米の常識を理解できなかったのです。

今後ですが、北朝鮮は一息つくでしょう。それはロシアからの物資の供給ルートが確保できるためで今までの中国一辺倒から余力ができるとみています。また、ロシアへの武器輸出が始まれば経済的にも潤うはずで今回の会談、そして時期を見てプーチン氏が訪朝するという関係強化はアメリカと韓国にとっては緊張が増し、中国は半ば袖にされたという屈辱に映るのではないでしょうか?

それでも中国は北朝鮮に対してニュートラルな関係を維持するしか現状では出来ないのも事実です。最大の問題は金正恩氏がやんちゃをしてミサイルを再び飛ばすことに精力を注ぐ点で日本政府としては北朝鮮の技術の進化については細心の注意を払う必要があります。ウクライナ問題が場合によっては東アジアの緊張感に転じる地政学的リスクは頭に描いておいた方がよいかと思います。

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年9月1日の記事より転載させていただきました。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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