日本経済の「失われた30年」の原因については多くの議論がありますが、見落とされがちなのは、それが中国や旧社会主義国の世界市場への参入によるグローバリゼーションの時代だったことです。

これはそれほど古い出来事ではありません。自由貿易という意味でのグローバリゼーションはアダム・スミスの時代から始まっていますが、情報ネットワークに乗って国際資本移動が自由になり、海外直接投資できるようになったのは、1990年代以降なのです。

世界のGDPに占める先進国(G7)のシェア

この時期まで、ヨーロッパを中心とする先進国(G7)は製造業で独占的な地位を保ち、工業製品を世界に輸出して高い成長を続けましたが、90年代からその生産拠点が新興国に移り、G7の世界のGDPに占めるシェアは下がっています。

世界最大の新興国である中国に隣接する日本は、グローバリゼーションの圧倒的な影響を受けましたが、それが不良債権処理の「失われた10年」と重なったため、問題をデフレと取り違えました。

安倍政権は「デフレ脱却」を掲げ、黒田日銀は量的緩和でデフレを打開しようとしましたが、ゼロ金利の日本から高金利のアメリカや新興国に資金が出て行き、国内の投資不足は悪化しました。

そして今、ウクライナ戦争後の世界では、中国やロシアのようなユーラシア国家がヨーロッパ中心のグローバリゼーションに背を向け、その逆転が起ころうとしているようにみえます。

2023年10月からのアゴラ経済塾では、19世紀にヨーロッパが中国を抜いた大分岐に始まり、なぜ90年代から大収斂が始まったのか、そして今、ユーラシア国家の再分岐でグローバリゼーションは終わるのかをみなさんと一緒に考えます。

授業はすべてオンラインで行うので、全国の(あるいは海外の)みなさんも視聴できます。録画をあとから見ることもできます。

講師:池田信夫(アゴラ研究所 所長)

テーマ(例)

「大分岐」はなぜ始まったのか 近代世界システムの誕生 マルクスが予見していたグローバリゼーション 物のアンバンドリングと情報のアンバンドリング 空洞化する日本 大収斂から再分岐へ ユーラシア国家はどこへ行くのか

など受講生のみなさんの関心に応じて決めます。

テキスト

池田信夫『資本主義の正体』 ポメランツ『グローバル経済の誕生』 ボールドウィン『世界経済 大いなる収斂』

など随時指定します。