ブラックバスやアメリカザリガニ、ホテイアオイなど、在来種の生存を脅かす「侵略的外来種」が、生物の大量絶滅の大きな要因であることが判明しました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
長良川でコクチバスが繁殖
先日、岐阜県などを流れる長良川上流部のため池で、特定外来生物であるブラックバスの一種「コクチバス」の繁殖が確認されました。これを受け岐阜県と長良川流域の7つの漁協が、長良川全域で駆除活動を行うことを決定し話題となっています。
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範囲が広いのは、コクチバス生息域の調査の結果、生後1年未満の未成魚が長良川の本流へ流出した可能性がとても高いためです。駆除活動ではアユ漁を行う漁協組合員に駆除への協力を依頼したり、釣り人にコクチバスの目撃・捕獲情報を寄せるように呼びかけるといいます。
密放流が原因か
当該ため池のコクチバスは確認された際のサイズから、自然に入り込んだのではなく人為的なもの、つまり密放流によるものである可能性が極めて高くなっています。
コクチバスについては以前より釣り人等による密放流が全国で問題になっていましたが、長良川はアユなど河川の水産資源が豊富なため、過去に行われたことがないほどの厳重さでの駆除が進められるとみられます。
なお、コクチバスなど特定外来生物の許可のない放流は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金が科される重大な犯罪です。
侵略的外来種
コクチバスのような外来生物は、同じ環境にいる他の生物を食害する、あるいは交雑してその固有性を失わせるなどによって在来種や生態系を危機に追い込みます。このような外来生物を「侵略的外来種」と呼びます。
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先日、このような侵略的外来種が関連している動植物の絶滅事例が、生物の総絶滅事例の約6割にまでのぼるということが明らかになりました。「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム」という研究機関が発表したものです。
侵略的外来種によって人間に有益な生物種が絶滅させられたことによる経済的な損失は、全世界で年間に4230億ドル(約62兆円)超ほどとなると見積もられており、今後さらなる増加が予想されています。
場所変われば保護対象にも
報告書によると、侵略的外来種は全世界で3500種以上にのぼり、現在も年200種というハイペースで増えているそうです。
このような侵略的外来種は、その多くが人間や物資の移動に伴って本来の生息地以外に持ち込まれたもの。そのためよその地では侵略的外来種としてピックアップされるものでも、原産地においては他の外来種によって生存の危機に追い込まれるということもあり得ます。
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例えば我が国においても定着し、世界の侵略的外来種ワースト100にリスト入りしているティラピアという魚がいるのですが、原産地のひとつであるアフリカのビクトリア湖では、南米原産の外来水草であるホテイアオイが大量に繁殖した影響で生息域を減らし、絶滅の危機にあるといいます。
生態系というのは多様であるからこそヒトにとっての利益も生まれます。生態系を守っていくために最も大事なのは「生き物をむやみに移動させないこと」なのだといえるでしょう。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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