歴史学者らの研究調査の準備作業は2019年に始まった。カトリック教会は、過去70年間の教会の歴史と虐待の歴史に関する歴史研究をチューリッヒ大学に依頼した。主な焦点は、個々の事件を明らかにすることだけではなく、教会内で大規模な虐待を可能にし、助長した組織的な原因を調査し、組織的な隠蔽につながった関連性を明らかにすることにあったという。
歴史学者は、「スイスのカトリック教会は、アイルランド、フランス、ドイツの教会と同様に非人道的な陰謀を行ってきたことが、公開されたパイロット研究によって証明された。司教たちは『聖なる』教会の評判を守るためにできる限りのことをした。性的虐待を犯した聖職者が処罰されないことが多いのは、司教たちが共犯者になっていたためだ」と指摘している。
バチカンニュースは12日、「136ページに及ぶこの研究は、スイスのカトリック教会における性的虐待を科学的に定義し、概説する初めての体系的な試みだ。今後のプロジェクトでは、追加のアーカイブ所蔵品を参照する必要があるだろう。それによって、性的虐待の頻度および時間的および地理的クラスターについて、より詳細な記述が可能となるだろう」と報じている。
司教会議議長のフェリックス・グミュール司教は、「スイスのローマ・カトリック教会における性的虐待に関するチューリッヒ大学の最終報告書は衝撃的だ。あまりにも多くの教会指導者が何十年も無責任な行動をとってきた」と率直に述べている。
バーゼル教区の責任者でもあるグミュール司教は、同教区でも過去、性的暴行疑惑事件の対応に誤りがあったことを認めている。同教区の助祭が1995年から98年にかけて未成年者への性的虐待を繰り返した。2019年に被害者がカトリック教会に虐待を通報した。スイス司教会議(SBK)の補償委員会は被害者と認定し、1万5000フラン(約1万5678ユーロ)の補償金を支払った。しかし、加害者には何の処罰もしなかったという例だ。ちなみに、バーゼル教区は信者数が100万人を超えるスイス最大の教区だ。
なお、同調査報告が公表される前、スイス教会では「6人の司教が性的虐待事件を隠蔽していた」という告発がなされ、大きな話題となったばかりだ。スイス司教会議は10日、「6人の司教が聖職者の性犯罪を隠ぺいしたという容疑を受けている」と認めている。
グミュール司教会議議長は、「同件については、ローマに報告済みだ。バチカンは6月23日、この問題に関する予備的な教会調査を命じ、ジョゼフ・ボヌマン司教を調査責任者に任命した。ボヌマン司教の予備調査は進行中であり、年末までに完了する予定だ」という。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年9月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?