2023/24シーズンのトレンドはクラシック&レトロ
2023/24シーズンのイングランド1部リーグでは、男女ともに「クラシック」「レトロ」などのキーワードがユニフォームのトレンド。全てのクラブが該当する訳ではないが、例えばリバプールのホームユニフォームには1974/75シーズンのデザイン要素が取り込まれている。チェルシーは1990年代、アーセナルは1980年代と、まさにファッション業界の流行サイクルと相まって歴史を辿るような動きをみせている。
ユニフォームデザイン同様に注目したいのがプロモーション映像だ。各クラブはユニフォームの新作発表にあわせて映像を制作するのだが、最近はストーリー性のある個性豊かな演出が加えられた芸術的な作品が誕生しており、そのクオリティは年々高まる一方だ。
特に、今シーズン公開された映像の中で際立っていたのが、アーセナルの3rdユニフォーム映像。やや時代を遡り、80年代の映画を思わせる世界観にフランス語の曲「Je Reviendrai(私は戻って来るでしょう)」を重ね、現代で活躍するワールドクラスの選手たちがモデル顔負けのポージングでフレームに映り込んでいる。出演している選手はDFリア・ウィリアムソン、MFデクラン・ライス、DFユリエン・ティンバー、MFマルティン・ウーデゴール、DFウィリアン・サリバ、MFカイ・ハフェルツの6名。
選手たちは1982/83シーズン時代の要素を取り入れたビリヤードグリーン色の3rdユニフォームに、白シャツやタートルネックシャツを組み合わせ、幾何学模様のジャケットやビビットな色合いのコートでまとめ上げたスタイリングで登場。色合いの美しさやカメラワークなど、構図もセンスの良さが光る。そして、最後に表示されるのは「EUROPE’S NEVER LOOKED SO GOOD」というキャッチフレーズ。そのシュールさにノックアウトだ。
この映像は、アーセナル公式Youtubeチャンネルで視聴可能。タイトル検索「Introducing the new Arsenal x adidas 23/24 third kit」でチェックしてみよう!
時代は快適さとエコフレンドリーな素材へ
前述のアーセナル3rdユニフォームを含め、スポーツブランドが近年製造しているシャツ素材には必ずと言って良いほどリサイクル素材が採用されている。例えば、化学繊維であるポリエステルは、吸水速乾などドライ系商品を製造する際に必要な素材だが、純粋な新規素材ではなく再生されたものを使用することで、持続的な製造が行えるようリユースの取り組みに力を入れている。
イングランド国内だけでも、各クラブから毎年リリースされるユニフォームの在庫問題も少なからず発生していると想像できる。そのため製造元としては、今後ますます再生素材の積極的な採用や循環型の製造モデル「サーキュラーエコノミー(廃棄せず再利用を前提としたデザイン設計)」を意識した取り組みが必要となるだろう。
数々の条件をクリアするのは簡単ではないが、選手のパフォーマンス向上はもちろん、ファッションとしても楽しめて地球にも優しいユニフォームが継続的に製造されることを期待したい。