番組制作会社は動画配信会社の仕事のほうがおいしい
――現在の受信料制度を続けると、他の悪影響も指摘されています。
放送業界で問題なのは、番組制作会社にお金が流れないということ。多くの人はNHKの番組をNHKがつくっていると勘違いしている。以前、NHKへ調査に行ったとき、担当者が「この渋谷のセンターにNHKの社員はどのぐらいいると思いますか」と聞いてきた。私は「半分ぐらいですか」と言ったら、「いやいや、20~30%です」と。7~8割は外部の人間ということだ。NHKの番組は自身でつくっているわけではない。社外に制作を委託している。
――その構造は、民放とまったく変わらないですね。
民放よりひどいかもしれない。NHKエンタープライズのような子会社が、外部の番組制作会社に孫請けに出す。やはり、制作会社にお金がしっかり渡るような仕組みをつくらないといけない。制作会社のジレンマは、良い番組をつくれば収入がそれだけたくさん得られるかというと、そうではないということ。そうすると、制作会社の立場からすれば、Netflixやamazonプライムの番組を優先的につくったほうがいいと考える。そのほうが見返りがあるからだ。制作費がさらにかかるような仕事のオファーが来るようになる。
――Netflixのような動画配信メディアからヒット作が生まれている理由の1つですね。
このままだと、良質な番組はすべて外資系の動画配信に行ってしまうし、すでに起きていることだ。どうでもいいような番組を日本のNHKや民放とかがつくる。さらに深刻な問題は、良質な番組が外国の動画配信に行くと、視聴料や広告料などのお金が海外に出ていく。そして、視聴データが全部海外に流れてしまう。日本人の生活時間の使い方や興味の対象、嗜好など細かいデータだ。そうすると、日本はNetflixやamazonプライム、ディズニーなどの文化的属国になってしまう。
――文化的属国になると、コンテンツの質も変わってきますね。
外国の動画配信メディアが何を考えるかといえば、日本人が好きそうな日本人に特化した番組をつくるのはやめようということ。彼らは、できれば何十億という人口がいるアジアという大きなマーケットで稼いでいきたいと考える。韓国のエンタメ業界やメディアはすでにそうなっている部分がある。韓国向けというよりは、日本も含めたアジアでそこそこ好かれる番組をつくろうとしている。日本は韓国の倍の人口がいるので、今のところ日本人に顔を向けて番組制作しているが、将来はわからない。
コンテンツそのものがアジア化していく。そうすると、日本人から見て、何となく違和感を覚えるような番組が増えるだろう。それでも、今の若者にとっては問題ないのかもしれない。
(文=横山渉/ジャーナリスト、協力=有馬哲夫/早稲田大学社会科学総合学術院教授)
提供元・Business Journal
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