共産党の小池書記局長「『戦う覚悟』という発言は、極めて挑発的だ。麻生氏は、明確な意思を伝えることが抑止力になると言ったが、恐怖によって相手を思いとどまらせることは、軍事対軍事の悪循環を引き起こすものだ。日本に必要なのは、戦う覚悟ではなく、憲法9条に基づいて絶対に戦争を起こさせない覚悟だ」
野党だけではない。連立与党の公明党からも、同八月末、山口代表の中国訪問を控えていたこともあり、「中国を明らかに刺激している。本来なら避けて欲しかった発言だ」との党幹部発言が報じられた。
台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない。私は昨年上梓した拙著『ウクライナの教訓 反戦平和主義(パシフィズム)が日本を滅ぼす』(扶桑社発売、育鵬社発行)で、そう述べた。「保守」陣営からの反発も招いたが、その一方、同書は「咢堂ブックオブザイヤー2022大賞」(外交・安全保障部門、尾崎行雄記念財団)に選ばれた。
きちんと同書を読んでいただければ、避けられた誤解だったが、「台湾有事は極東有事であり、日本有事ではない」が、同時に、けっして台湾有事は他人事ではない。むしろ日本は当事国となる。その趣旨で「台湾有事は日本有事」と言っても許されるかもしれないが、それでは、日米間の「事前協議」問題や、中国による核恫喝のリスクを含めた重要な論点が雲散霧消してしまう(拙著参照)。私を批判するだけの「保守」陣営には、そのリスクが見えていない。
麻生副総裁が述べたとおり、「戦う覚悟」は必要である。だが、すでに現職総理でもなく、閣僚ですらない自民党副総裁が、そう講演しただけで内外から反発や批判が噴出するのだ。そのとき、本当に「戦う覚悟」を持てるのか。小谷哲男教授(明海大学)のX(旧ツイッター)投稿を借りよう。
「戦う覚悟」発言、究極的には日本国民が持つべき覚悟を意味する。しかし、台湾有事に介入すれば東京を核攻撃すると言われてもその覚悟を持てるのか。日本が攻撃されてなくても、台湾海峡を渡る中国艦船を自衛隊の対艦ミサイルや潜水艦で攻撃する覚悟はあるのか。日本国内でまず議論すべき問題。
— Tetsuo Kotani/小谷哲男 (@tetsuo_kotani) August 14, 2023
そのとおり。拙著『台湾有事の衝撃』(仮題・秀和システム)は、日本国民に、その覚悟を問うている。なお、同書は主に、この「アゴラ」への寄稿を再構成したものがベースとなっている。再録をご快諾くださったアゴラ関係者の皆さまに、この場を借りて感謝申し上げたい。
(次回に続く)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?