真っ先に老いるのは「心」

脳の機能で真っ先に衰えるのは、感情や意欲を司る前頭葉である。訓練をすれば計算能力や暗記力はかなりの程度維持できる。しかし、前頭葉が萎縮すると、感情の制御が効かなくなり極めて取り扱いの難しい人格へと変貌してしまう。そうなれば周囲から人はいなくなってしまい、孤独感を強めてますますふさぎ込む。できればこの負のスパイラルを防止したいところである。

前頭葉の萎縮を防ぐには仕事をするのが一番効くと、複数の脳医学者や精神科医が主張している。仕事をする上では前例が通用しない変化への対応を余儀なくされたり、足りない知識を学習で補ったり、価値感が異なる相手との難しい交渉をしたり、難しい決断をする場面に直面する。これらは脳にとって大変良い刺激になる。脳トレで単純な計算ドリルや漢字ドリルを解くより、お客さんと仕事のコミュニケーションを取る方が脳に良いのだ。

有名な話で100歳の双子、金さんと銀さんは痴呆の症状が出ていたが、テレビ番組で人気が出てメディア出演の機会が増えるごとに痴呆の症状が改善したという話がある。人前に露出する仕事を通じて、脳の活性化が起きたのだ。

定年退職は第二の人生のスタートと言われる。だが、人生100年時代においてはまだまだ60%、半分を少し過ぎたほどでしかない。残り40年間という膨大な時間を仕事をせず過ごすのはあまりにも長すぎる。これでは生活資金が枯渇してしまうリスクだけでなく、趣味や娯楽だけで心豊かにというには到底消費しきれる長さではない。定年退職は「心待ちにする人生のゴール」というより「仕事の第2ラウンドのスタートライン」という考え方が良いかもしれない。

 

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