筆者は、今年の6月14日、朝日新聞の「耕論」というコーナーに寄稿した(朝日新聞ウェブサイト参照)。そこで、企業間の支配の問題といじめや性加害に関する支配の問題を論じた。そこでは次の文章を書いた(語尾など一部修正)。

 特定の何かや誰かが強大な力を持つときは、支配のリスクを明確に意識して、あらがう仕組みを整えておかなければいけない。重要なのは選択肢の多様性、そして追い詰められないための非常口を確保しておくこと、その手段に出るハードルを低くしておくことである。

これは企業間の支配構造などにはよく当てはまるだろう。優越的地位の濫用から免れるには相手にそのような地位に立たせないことが肝要だ。組織内部や人間関係にも同じことが当てはまる。しかし抜け出せない支配もあるし、そうであるが故に深刻だ。だから人々は搾取や、いじめ、性加害の被害者となり悩み続け、最悪の結果を迎えることもあるのである。そこでこのようにも述べた。

 人間関係や社会における支配構造は、そうはいかない。いじめや性被害などのハラスメントは、深刻な問題であり続けている。それらも当事者間の問題としてだけ処理されるのではなく、独禁法のような、外部の目を通じて有効に機能する非常ボタンを用意しなければならないのではないか。

その非常ボタンを押すのは誰か。トラウマを抱える被害者にすべて委ねるのは酷である。その一端を担うのが大手メディアのはずだったがそれが機能しなかった。被害を生み出さないための、被害者を救済するための制度構築が急がれる。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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