社会における女性の地位が低く、男性優位と女性蔑視の文化が色濃く残っていると、そうではない社会よりも性暴力を誘導する傾向がみられる(Gurvinder Kalra and Dinesh Bhugra, “Sexual violence against women: Understanding cross-cultural intersections,” National Library of Medicine)。

カナダのエドモントン性暴力センターによると、性暴力の動機は性的快楽よりも弱い立場の相手を支配し、自己の優越性を示すことにあるという。相手を屈服させることで快楽を得たり、高めたりするわけである(Sexual Assault Centre of Edmonton)。

ジェンダー不平等が放置され、女性や性的マイノリティが弱い立場に追いやられ、「男性」の優位性が温存されているような社会は、性暴力との親和性が高いのである。フェミニストは、このような社会のシステムを「家父長制」と呼んできた。

ここで主導権を握るのは、性的に(多文化社会では人種や民族においても)多数派かつ年長の男性であり、性的少数派や年若い男性も女性と同じように被支配的立場に立たされる。故ジャニー喜多川による少年への性的虐待も彼とその事務所の「家父長制」な体質が影を落としていたのではないだろうか。

したがって、性暴力の抑止にジェンダー平等は欠かせない。性暴力の厳罰化、性教育など様ざまな予防策はあるが、長期的にはジェンダー平等社会を実現していくことだ。

では、ジェンダー平等は実際に効果を発揮しているのであろうか。表は、EU諸国のジェンダー平等の程度と性暴力/セクハラの被害状況を比較したものである。残念ながら、表はジェンダー平等指数の高い国ほど性犯罪の被害者の比率が高い傾向を示す。なかでも、ジェンダー平等先進国の北欧における被害の高さには正直驚かされる。

表 EU諸国にみるジェンダー平等と女性の性被害の関係※性的被害の調査年に最も近い2015年のデータを使用、出典:EIGE Gender Equality Index, GEIについては、 を参照のこと※※2012年から2013年に28加盟国42,000人の女性を対象に調査をした。なお、本調査ではイギリスが含まれていたが、2015年のジェンダー平等指数には入っていなかったので割愛した。出典:Violence against Women : an EU-wide survey※※※同上調査による。身体的接触(キス、ハグなど)から猥褻な写真を見せる、SNS上の性的なプライバシーに関する中傷まで11項目のセクハラ行為のうち1つ以上該当した者の比率である。

見事に期待を裏切る結果である。しかしながら、私は、これを以て、ジェンダー平等は性暴力の抑止には効果がないとは考えない。それどころか、ジェンダー平等が進んでいるからこそ女性の性被害の訴えが多いのではないかと分析する。なぜか。理由は次回の投稿で述べたい。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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