ウミウシの特殊な生態

光合成できるテングモウミウシ
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ここでウミウシの生態について改めておさらいしておきましょう。

前述の通りウミウシは貝殻を失った貝の仲間です。

殻を持たない分、防御力が低いことから、捕食されないように鮮やかな体色で「食べたら危険」だとアピールしているのだといいます。

実際、ウミウシはクラゲなど食べた相手の毒を体に取り込み、攻撃してきた捕食者に対して放出することができます。

取り込めるのは毒に限りません。

藻類を食べるウミウシは葉緑素を体内に取り込み、光合成までできるというのだから驚きです。

飼育できない?ウミウシの複雑な食性

水族館でもよく見られるヒカリウミウシ
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ウミウシが飼育できない一番の要因はその複雑な食性にあります。

先ほど挙げたクラゲや藻類をはじめイソギンチャク、ヒトデなど様々で、中にはウミウシを食べるウミウシもいるのです。

そして多くのウミウシが専食性で、ウミウシの種類によって食べるものが異なり、それ以外は食べません。

専食性のウミウシを飼育するとなれば、もちろん人工飼料は使えず、生息地で餌を取ってこなくてはならないため、水族館なども飼育をあきらめるケースが多いそうです。

とはいえ中には複数の餌に対応できる広食性のウミウシもいます。

ヒカリウミウシなどがその1つで、身近な冷凍オキアミなどでも育てることができるため、鳥羽水族館や海響館など複数の水族館で見ることができます。

ウミウシを見つけたら触らずその場で観察してみて

岩場で見つかったトトロウミウシ
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ウミウシはその複雑な食性から、捕まえても飼育が難しい生き物です。

また、毒を持つことも多いので見つけても触らずに観察するだけにしましょう。

水族館ではあまり見られないウミウシたちも日本近海に多数生息しており、海に潜らなくても海面を漂っていたり、潮だまりに取り残されていることもあります。

意外に身近なウミウシたち、見つけたらぜひその場でじっくり観察してみてくださいね。

参考文献
Nudibranch
元論文
Incorporated nematocysts in Aeolidiella stephanieae (Gastropoda, Opisthobranchia, Aeolidoidea) mature by acidification shown by the pH sensitive fluorescing alkaloid Ageladine A
A Photosynthetic Animal: A Sacoglossan Sea Slug that Steals Chloroplasts