北欧のコーラン焚書と、それを取り締まらず容認する国に対し、イスラム世界では怒りの声が高まってきていた。「イスラム協力機構(OIC)」(56カ国・1機構)は2日、サウジアラビア西部ジッダで臨時会合を開き、対応を協議した。また、欧州連合(EU)カトリック司教協議会委員会(COMECE)は4日、スウェーデンにおけるコーランの焚書を非難した。

フランシスコ教皇はアラブ首長国連邦の日刊紙とのインタビューで、「こうした行為に憤り、嫌悪感を抱く」と語った。「神聖とみなされた本は、信者への敬意から尊重されなければならない。表現の自由は、他者を軽蔑する言い訳として決して利用されてはならない」と述べている(バチカンニュース独語版)。

コーラン焚書は国内のデンマーク国民とイスラム系住民との間に緊張をもたらしている。ホメルゴー法相は、「法案を作成した最大の理由は国内の治安対策とイスラム教国との間の国家安全保障の強化だ」と述べている。

同法相は、「暴力的な反応を引き起こすためにあらゆる手段を講じる一部の人々を黙って見過ごすことはもはやできない」と指摘。デンマークでは、コーラン焼却以来、国内のテロの脅威が高まってきている。実際、テロ組織のアルカーイダは、スウェーデンおよびデンマークでのコーラン焼却に関して、EU加盟国へのテロ攻撃を示唆する声明を発表している。なお、スウェ―デン政府はデンマークと同様、コーラン焚書などの行為に対する規制強化を検討している。

デンマーク政府は、「言論の自由」という名目でこれまで黙認してきたコーラン焚書などの行為に対し、「宗教団体にとって重要な意味のある文書や関連物への不適切な行為を禁止する」と明記したわけだ。その目的は第一に国内の治安対策だが、「言論の自由」にも制限が伴うケースがあることを認めたことは大きな前進だろう。政府は同法案を9月1日、議会に提出する予定だ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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