
TRUMP 2024より
顧問・麗澤大学特別教授 古森 義久
ドナルド・トランプ前大統領がわずか4ヵ月余の間に4回も起訴された。前大統領を起訴するだけでも前代未聞なのに、立て続けに4回とは、いくら対立と混迷のアメリカ政治の中でも過多すぎるのでは? と思っていたら、反トランプ氏のリベラル陣営からも、そんな意見が飛び出したので、驚き、かつ安堵した。
驚きは、この反対論が反トランプ陣営の中枢なような人物から発信されたことに対してだった。
安堵は、民主党リベラル勢力のなかでも、今回の4回連続起訴に反対する常識論が存在することに対してだった。アメリカ民主主義の支柱ともいえる意見の多様性はトランプ憎しで凝り固まったかにみえるリベラル派にもまだ残っている証拠だと感じたわけである。
この驚きの反対論はワシントン・ポストの著名なコラムニストのルース・マーカス記者による8月15日付の同紙に載ったコラム記事だった。「ジョージアでのトランプ糾弾は過剰ではないのか」という見出しの記事である。
マーカス記者といえば、きわめて広く知られたリベラル派の女性コラムニストである。1980年代からワシントン・ポストの記者としてホワイトハウスや最高裁判所の取材を担当し、評価の高い記事を多数、書いてきた。2006年からはワシントン・ポストのコラムニストに昇進し、独自のコラム記事を毎週、自由闊達に載せてきた。だがその基本の政治スタンスは一貫して民主党傾斜のリベラルだった。だからトランプ氏に対しては常に批判的だった。
ワシントン・ポスト自体も長年、国内政治では明確に民主党支持、リベラル支援、保守批判だった。だからマーカス記者はリベラルの旗を高く掲げるコラムニストだったのだ。そのマーカス記者も、ワシントン・ポストも、共和党保守のトランプ前大統領に対しては、ほぼすべて反対という厳しい批判の立場を保ってきた。
だが、今回に限ってはそんなリベラル派、反トランプ勢力の旗手ともいえるマーカス記者が第4回目のトランプ氏起訴に対しては反対論を表明したのである。
ではまずその4回目の起訴の内容について説明しておこう。