レクサス300e バージョンL/価格:685万円 試乗記

航続距離512kmを実現。スムーズな走りが好印象
ジェントルな存在感のため目立たないが、トヨタ系で初の市販BEVは、このレクサスUXである。2020年秋に抽選販売され、2021年2月からは通常販売されている。
当初は54.4kWhのリチウムイオン電池を搭載し、満充電からのWLTCモード航続距離は367km。正直なところ、少々物足りない感があった。だが先日リファインを実施して新開発の72.8kWh電池パックを搭載し、航続距離は一挙に512kmまで伸びた。実に従来比で約40%増である。これならファーストカーとしても十分な性能といえる。BEV技術は日進月歩とはいえ、開発陣のUXにかける強い思いの現れであることは間違いない。
改良点は航続距離だけではない。上質ですっきりと奥深い走りを深化させたほか、カーブ速度抑制機能や床下透過表示機能を追加した運転支援と予防安全技術を採用。音声認識機能を備えたマルチメディアシステムも組み込んだ。満充電時に約2.5日の電力供給(400W時)を可能としたV2H対応もプラスポイントだ。


走り出すと、徹底したノイズクリーニングによる静粛性と、滑らかな走りに感心した。まさにレクサスらしいドライブフィールに仕上がっている。150kW/300Nmのモータースペックは変わってないが、微妙なアクセルワークへの応答性が増し、踏み込んだときにパッと前に出る感覚がより力強くなっているのも好印象。とくにスポーツモードの走りは気持ちいい。アクティブサウンドコントロール(ASC)が装備されており、アグレッシブに走るとサウンドのピッチと音圧が上昇するようになっていた。
足回りの印象もずいぶん変わっている。従来から標準のパフォーマンスダンパーやステアリングギアブレースに加えて、改良版はスポット溶接打点を20点追加しボディ剛性を強化。さらに、BEV特有の低重心パッケージが生む優れた基本性能を引き上げるために、下山のテストコースを徹底的に走り込み、ステアリングや足回りの最適化を図ったという。
確かにハンドリングは意のままイメージ。もともと好印象の操舵感を実現していた電動パワーステアリングはさらに丁寧にチューニングされ、応答遅れのない一体感のある動きを実現していた。乗り心地もしなやかだ。従来は車両重量に対して不要な動きが出ないようにするためか、つっぱった感じになっていたところ、新型はしなやか。タイヤが路面に追従する感覚がずいぶん自然になっている。


室内は前席優先設計。後席は狭くはないが、広いともいえない。通常モデルと比較するとフロアの高さや前席下への足入れ性がバッテリーなどの搭載で微妙に変化しているが、指摘されなければわからないレベル。その影響は小さく抑えられている。
電動車への注目がますます高まる中、レクサスUXは想像以上に大きな進化をとげていた。さまざまなシーンで「BEVっていいな」と思わせる完成度の持ち主である。