武蔵野美術大学の美術館にて、10月23日(月)~11月19日(日)の期間、展覧会「西田俊英ー不死鳥」を開催する。
同展では、巨大日本画「不死鳥」を核に、西田氏の原点となる少年時代の作品から、インド留学を経て森羅万象を神とする日本人の心で、風景・動物・人物・花を愛情深く精緻な筆致で描いてきた作品群まで、27点を通し、その50年におよぶ画業の軌跡を追う。
現代における日本画壇の代表画家の一人西田俊英氏
西田俊英氏は、現代日本画壇を牽引する作家の一人だ。同氏は、湿潤な日本の風土やヨーロッパの街並みを捉えた風景画、ボルゾイ犬をモチーフとした現代的な花鳥画、インド留学が転換期となり描きはじめた人物画など様々な題材に果敢に挑戦し続けていることでも知られる。
その確固たる技法に裏付けられた幻想的な空間表現および、日本画の精神性を重んじ、崇高な物語の漂う新しい表現を追求している。
大作「不死鳥」を核に西田氏の世界に触れる展示会
「西田俊英ー不死鳥」では、完成すれば縦2.05m、全長70mに達する巨大日本画「不死鳥」が核となる。同作品は、人間と自然の森との共生、尽きることのない生命の循環の物語を紡ぐため、西田氏が昨年から1年間屋久島に移住し、日々山に分け入って写生を繰り返した。
「不死鳥」は、屋久島をめぐる悠久の物語。人間と自然の森との共生、尽きることのない生命の循環する営みが、展示室の中で一続きの巨大な絵巻物のように展開される。
全6章で構成されるその壮大な物語は「序章」の言葉からはじまり、「第一章 生命の根源」では、すべての生命の源である一粒の水滴、そこに集う蜘蛛・蜥蜴・蛙・蛇などの様々な生き物たちが繊細な描写で描かれる。全長7mを超える優美な姿で描かれた生命の象徴・不死鳥が飛び立つ様は圧巻だ。
「第二章 太古からの森」では、妖精が住う豊かな原生の森の様子が描かれる。透き通った淵の水鏡や、星空のように地面が瞬く闇の森に、見る者を引き込んでいく。続く「第三章 森の慟哭」では、豊かな森の伐採がはじまり、巨樹が切り倒されていく苦難の時代が描かれる。本展ではこの第三章の一部までを展示する予定だ。
物語はその後、「第四章 逃げる精霊(彷徨う精霊たち)」として、森の棲み家を失い、息を殺して生きている精霊や生き物たちの様子が描かれ、「第五章 森の再生・命のバトンタッチ」「最終章 森と人のユートピア」として、自然と人間との共存という結論へ続いていく。
真摯に取材を繰り返し、樹齢数千年の縄文杉から数ミリの菌従属栄養植物まで、徹底して自然のあり方と向き合い続けてきた西田氏が紡ぐ「不死鳥」。島に息づくあらゆる生き物が一体となった「一木一草全てに神宿る」屋久島の自然に深く触れ、森と対峙した同氏が、日本画の特質を生かしながら、変幻自在の日本画に挑戦した軌跡を堪能したい。
西田氏は、どんなモチーフにも果敢に挑戦し続けた奥村土牛氏。そして、深い知見と独自の哲学で描いた塩出英雄氏の、2人の師から受け継いだ精神を胸に研鑽を重ね、あくなき探究心と尽きることのない情熱で日本画を描き続ける。
展覧会「西田俊英ー不死鳥」で、変化を恐れず、新しい試みに全身全霊で挑み続ける画家の世界に身を委ねてみては。
西田俊英ー不死鳥
会場:武蔵野美術大学 美術館展示室2・3、アトリウム2
所在地:東京都小平市小川町1-736
会期:10月23日(月)~ 11月19日(日)
時間:11:00~19:00 ※土曜・日曜・祝日・10月27日(金)は10:00~17:00
休館日:水曜日
入館料:無料
(高野晃彰)